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―東京駅
『人...人...人。この感じ久々やな』
そして一ノ瀬は横にいる彼を見つめる。
牛「なんだ?」
『いやー、デジャブ感すごない?』
牛「デジャブ?」
『気にせんでええよ。お、バスきた』
U-19の試合が近いため一ノ瀬は再び東京へ来ている。
そしてバスの中を見ると、前回同様に人で溢れ返っていた。
『アカン。無理や』
牛「こうしていればいいだろ」
牛島はぎゅっと一ノ瀬を自分の方へ寄せる。
『せやから...ぐぅ。あんがと』
牛「気にするな」
『もう全てにおいてデジャブ感凄いから聞くけど、最近のおもろいやつは?』
一ノ瀬は牛島の胸に顔を埋めながら話すと牛島は顔を少し歪める。
しかし、一ノ瀬からはその表情はみえない。
『牛若?』
少し不思議に思い一ノ瀬は顔を上げる。
牛「...ヒナタショウヨウ、カゲヤマトビオ」
『ヒナタ?カゲヤマ?』
牛「あぁ」
『なんや及川君以外の名前が出んの珍しいな』
牛「宮城の烏野高校だ」
『へぇー...烏野』
一ノ瀬は再び牛島の胸に顔をつける。
『でも、おもろい言う割に自分怖い顔してんで』
牛「お前の言うおもろいやつに当てはまるかがわからない」
『ふーん。でも他人に興味ないお前が名前覚えるくらいには興味あるんや』
牛「まぁな」
一ノ瀬は『ふーん』と相槌を打ちながら目を閉じる。
数十分後牛島の声で再び目を開く。
牛「次降りるぞ」
『んッ』
牛「大丈夫か?」
『大丈夫。自分...信介みたいな所あんな』
牛「信介?」
『我らがキャプテン北信介』
一ノ瀬は牛島の後ろに続き、バスを降りていく。
『明日出発やっけ?』
牛「あぁ、明日の13:00だ」
一ノ瀬は牛島の方に拳を突き出す。
『世界選手権改めてよろしくな』
牛「あぁ」
『せやから拳合わせんのかーい!』
牛「そういう意味か」
『あれ?これこの間やったよな!?な!?』
牛「元気だな」
『だーッ!!この人全然信介やない!もぉー...いやや』
牛「?」
今日も稲荷崎が恋しくなった一ノ瀬であった。
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作者名:みる | 作成日時:2022年11月19日 19時