ぬらりひょんの本質 ページ8
嫌な夢に心臓がドクンドクンと嫌な音を立てる。
「牛鬼……！」
ハッとして後ろを振り返るとそこにいたのはかつて捩眼山で自分を成長させてくれた奴良組の幹部の一人。
「ここ…どこだ？みんなは…？ボクはどーなってしまったんだ？」
どこかの寺の中なのか何体もの像が並べられている。
そして、奴良組を始め遠野勢や陰陽師達の姿も見当たらない。
「私が運んだんだリクオ…。どこへ行くリクオ」
ガタと音を立てながら扉を開ける。
「土蜘蛛を倒しに行く！！時間が無いんだ！氷麗とAを助けに行かなきゃ！！」
宣言したリクオの背後に立つ牛鬼の姿にゾクッと湧き上がる嫌な気配とブワッと吹き出る汗。
その恐ろしさから逃れようとゴロゴロと地面を転がって距離をとる。
「今のお前では無理だ。百鬼夜行配下の者の畏に気圧されるようではな」
距離を詰めてくる牛鬼を歯を食いしばりながら見つめるリクオ。
「う…うう…」
それは、牛鬼の畏。
「奴良組を率いる者は決して負けてはならんのだ」
向けられる刀を何とか受け止め躱す。
「かわして…そしてどうする」
荒い息で再び床を転がるリクオを振り返り冷静に尋ねる。
「え…」
「リクオ、お前は遠野に行き…"自分"をより理解できたようだな。だが"ぬらりひょん"という妖の本質はそこまで…なのだ」
目を丸くして驚く。
「畏を断ちふところに入ることは可能。そこまでが能力」
「え…どう…いう…」
牛鬼の振った刀により崩れて地面に落ちてくる像。
「リクオ…お前はここ数か月でたしかに強くなった。しかし京ではそれでは足りぬのだ。お前自身の刃を届かせるために、お前にはやらねばならん事が二つある…時間が無いのならば三日だ。その間に…ぬらりひょんより強くなれ」
「……自分より…強くなる…？い…一体何のこと…！？」
自分を見下ろしながら告げる牛鬼の言葉に首を傾げる。
恐怖や焦り、驚きに目を丸くし汗を浮かべながらそう問いかける。
「牛鬼…口で言っても伝わらん。実戦あるのみだ」
二つの像の間に立ちながらそう声をかけてきたのは刀を床に突き立ててその場に佇む鼻の長い老人。
「そうだな…リクオよ、刀を抜け。百鬼の主たるべき"業"を三日の内に手に入れるのだ…」
「業…！？"業"って何だよ！？牛鬼！？」
わけもわからず問いかけたリクオの目の前に放たれた斬撃を地面に手をついて何とか躱した。
「刀を抜けリクオ。己を超えてみろリクオ！！」
これが牛鬼の本当の畏なのかと思い知る。
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作者名：エッグタルト | 作成日時：2024年3月7日 1時
