父への謝罪 ページ46
リクオ達が土蜘蛛と対峙し、イタクを鬼纏って闘っている頃。
そして、祖父であるぬらりひょんが弐條城にて羽衣狐達京妖怪と対峙していた頃。
Aは高熱に浮かされながら夢を見ていた。
それは、昔の記憶。
そのほとんどに父、鯉伴の姿があった。
羽衣狐との因縁からかここ最近父の夢をよく見ていた。
お父さん…。
寝込んでいたことの多かったAは余り父との触れ合いは多くはなかった。
しかし、体調が良くなったのか逐一確認しにきてくれたり、少しでもマシな日は外に連れ出してくれたりもしていた。
だから、全く思い出がないというわけでもないのだが。
自分が父に対して抱いていたように、父も自分に対して罪悪感や同情を抱いていたのだろうかと、その優しさを素直に受け取ることができない自分に嫌気がさす。
ふと、夢の景色が入れ替わる。
辺り一面に山吹が咲き誇るお寺の道。
嬉しそうにはしゃぐリクオと、小さく咳き込みながら父と手を繋ぐA。
駆け回るリクオを微笑ましそうに見つめながら、ぎゅっと手を握りしめるAの頭をクシャリと優しく撫でる鯉伴。
そんな鯉伴の顔を見上げて恥ずかしそうな嬉しそうな顔をするA。
そして、そこに現れた長い黒髪の美しい少女。
少女の誘いに応じて一緒に遊ぶことになったリクオ達。
促されたAだったが、人見知りからくる気恥ずかしさと警戒心から断って鯉伴の側にいた。
そして、鯉伴が詠んだ和歌を聞き、不思議に感じてその顔を見上げたと同時に父の体を刀が貫いた。
初めて目にした刀の鋭さと父の体から溢れる血。
そして、倒れる父の体に無我夢中で自分の掌を翳したその時、熱くなる体に比例して光り出した掌。
その傷は父の傷をほんの少しずつ癒し始めた。
小さな呻き声を漏らす父に困惑して泣きじゃくるA。
そして、驚いたような声を出した後、まるで面白いおもちゃを見つけたと言わんばかりの狂気さを感じさせる笑みを浮かべて幼いAを見つめる少女。
あの時、私がお父さんを助けることができていたらー。
そんな、意味のない後悔ばかり抱いてしまう。
例え自分があの時父の命を救うことができていたとしても、あの場所にはAとリクオがいた。
無力な自分達を守り逃げ出すのは容易ではなかっただろう。
お父さん…ごめんなさい…っ。最後まで、何の役にも立たない娘で。
溢れる涙を慌てて拭うAの周囲はいつの間にか真っ暗になっていた。
「大丈夫ですか？」
優しい声。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 18人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：エッグタルト | 作成日時：2024年3月7日 1時
