土蜘蛛の本気 ページ35
凍り付いたままその先を失った土蜘蛛の腕に、勝てる希望が見えたと興奮する奴良組達。
「……やっと…見つけた」
土蜘蛛はマッチの火をキセルに近づけるとプカァと息を吐き出した。
「まさかこんなガキがな、鵺とやるまでのつなぎかと思っていたが」
そんな土蜘蛛をジッと見つめ返すリクオ。
「源平の世も戦国の世も退屈で退屈で…しょーがなかったんだよ……。おお…そうだ『鵺』…鵺ともう少しで会えるんだ。あんとき以来だ…千年ぶりか。いいぜぇオイ、もう一回…出してくれよ今の」
土蜘蛛の纏う空気が変わったことに気がついたリクオの視線が鋭くなる。
「遠慮しねぇでいいぜ？ホラどうした？…やれよ」
ダンダンと激しく地面を踏み鳴らす土蜘蛛に息を呑む。
「ホレホレどした、オレは的だ」
そして、動かないことに苛立ったのか側にあった柱を掴んで地面に叩きつけた。
「やれよォ。んはは、楽しーなぁ！！オイイ！！ほらよぉ！！イィィヤッホィイイーッてよォ、しゃがんでる場合じゃねぇわ！！」
バキバキと壊されていく相克寺に驚き息を呑む面々。
「『本気』出さねぇと♡やられちまうかもなぁお前の刃にイ〜。早く斬りつけてこいッ！！」
ワクワクとした気持ちを隠せない様子で笑う土蜘蛛は恐ろしい。
「もっとだどんどんこいよ！！」
楽しい、早くやり合いたいと言った様子で次々と壊した柱を手に地面を殴りつける。
それを鏡花水月で躱すリクオの表情は険しく歪められていた。
柱を手に構える土蜘蛛と真正面から対峙し睨みつける。
「やっとオレと闘える奴が見つかった」
土蜘蛛は口元から無数の糸を吐き出す。
その光景に呆気に取られていると、顔を横に振り回して折った柱に巻き付けていく。
いつの間にか、リクオは糸の中に土蜘蛛と二人きりで閉じ込められていた。
外とは完全に隔離されてしまっていた。
「今度はへたばんなよ。やりあうぞ、ここからが戦いだ」
足をトントンと踏み鳴らして飛ぶ土蜘蛛を、刀を構えて睨みつける。
その衝撃でバキバキと砂と破片が落ちてくる。
土蜘蛛の千年ぶりの本気である。
「発気揚揚」
相撲をするかのように四股踏みをして勢いよく突っ込んでくる。
畏を発動して躱したリクオの背後で、自分が張った糸に突っ込む。
目を大きく開くと反対を向いて再びリクオの方に向かってくる。
走って距離を取るリクオの着物は裂け、腕からは血が吹き出す。
流石に躱しきることはできなかった。
「もう、逃げらんねぇぞぉ」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 18人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：エッグタルト | 作成日時：2024年3月7日 1時
