御業"鬼纏" ページ33
「つらら…お前はもう守らなくていい」
驚き固まる雪女。
「けど、そのかわり…お前の"思い"と"力"オレにかしてくれねぇか」
言われた言葉に反応する。
「百鬼夜行の主は…お前たちの"思い"を背負って強くなってゆく。オレが…これからそうなっていってみせる！」
「リ…リクオ様…」
強く固い決意を見せるリクオに僅かに動揺する。
「わ、わかりました…でも…私はどうしたら…？」
「だから…お前のその心も体もオレに全部あずけろ！！」
一見プロポーズかと捉えられそうなそのセリフと自信に満ちた表情に赤くなる雪女。
うわ……すご……。何か…見ちゃいけない場面を見ちゃった気分…。
Aの頭も体もぼんやりとしているのに、何故だかその一言を聞いた途端に熱が跳ね上がった気がする。
「いくぜつらら」
「え…？若？心…か体！？」
言いたいことは言ったとばかりに背を向けるリクオに戸惑いを隠せない雪女。
当然だろう、リクオの言葉は下手すれば全く違う意味に捉えられかねない。
本当に、天然たらしだ…！
「魅せろ、お前の"畏"。オレのために畏を…解き放てつらら！！」
「え…は…はい！！」
振り返ってジッと見つめられたことで更に顔を赤くして叫んだ雪女。
次の瞬間、彼女はリクオに纏われていた。
鴆の時と同じ。
その今までに感じたことのない気配と感覚に目を見開いて勢いよく体を起こしたA。
「…！！」
「おい！！体起こしてんじゃねぇ！！バカA！！」
鴆の言葉すら耳に入らない。
実際、とても体を起こせるような状態ではないのだが。
「いくぜ土蜘蛛！！魅せてやる！！これがお前に届く刃だ」
「ほおおおお！！おもしれぇじゃねぇか、向けて来いその刃！！！」
鴆は、手当てをした牛鬼から聞かされた説明を思い出す。
御業とはー二代目が使っていた人と妖の血が成せる技、百鬼をまとう業ー！！
それは共に信じ合う者だけを背負いその畏をおのれの体にまとわせる奥技。
折り重なる畏は何倍もの力となる。
かつて百鬼はそれをこう呼んだ、百鬼の主の御業"鬼纏"とー！！
リクオの刀には氷が憑依しており、振り下ろした刀は向かってくる土蜘蛛の拳、腕をパキパキと凍り付かせた。
鬼纏雪の下紅梅。
氷を纏った刀。
その美しさから目が離せない。
意識の外で、早く横になれと叫ぶ鴆の声が聞こえる。
けれどAの耳には、その美しさと恐ろしさに魅入られてそんな鴆の声は何一つ入っていなかった。
ああ…これは敵わないや。
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作者名：エッグタルト | 作成日時：2024年3月7日 1時
