それぞれの想い ページ29
自分の目の前で祖父を失い泣き疲れて眠ってしまったゆらを見守る十三代目だったが、主であるゆらが気を失ってしまったことでその姿が揺らぐ。
あくまでも彼は彼女に呼び出された式神であり霊なのだ。
後のことを秋房に託して姿を消す十三代目に、ゆらは大好きな祖父の命を奪った京妖怪、そして羽衣狐に対しての怒りと決意をかためる。
一方で、姿を消したゆらと奴良組の妖怪達の後で、龍炎寺にて茨木童子と鬼童丸の相手をしていた竜二と魔魅流。
が、そんな彼らも京妖怪が撤退したことで一息ついた。
その頃、土蜘蛛はキセルを口から離し煙を吐き出していた。
「……おっせぇなぁ…あのガキ」
天井から吊るされている雪女は、幼少期のリクオと交わした会話を思い起こしていた。
リクオが立派な総大将になるまで自分が守るのだと告げた氷麗に、リクオは真っ直ぐな目で言った。
自分がつららを守るのだと。
その足元で気を失っているAもまた、熱に浮かされながら父のことを思い出していた。
…何でだろう。ずっと忘れてたのに……あの時、お父さんは何て言ってたんだっけ…。
何かとても大事なことだったはずなのに、何も思い出すことができない。
そのことが、どうしようもなく悔やまれる。
鞍馬寺にて牛鬼の畏を断ち切ったリクオは、バッと奴良組の畏の羽織を羽織った。
「土蜘蛛は相克寺にいる！」
そして、スッと刀を構えて目を細める。
「ずいぶん時間かかっちまった…まってろ、つらら、A」
助けに行くのは、大切な部下と大切な家族。
そんなリクオの後ろには、鴆だけでなく天狗達の姿も。
「行くぜ！！土蜘蛛退治だ。オレのうしろに…ついてこい！！」
また、真っ暗な京都の街を見下ろすのは遠野妖怪達。
そこに、冷麗と土彦、紫の姿は見えない。
土蜘蛛に狙われた冷麗とその冷麗を庇って怪我をした土彦。
そんな二人の側に、座敷童子である紫がついている。
「リクオ、これはお前の出入りだ…だから牛鬼の言う通り"三日"待ってやった。だが遠野はもう待てない」
イタクはその目を鋭く細める。
「今夜、子の刻までに出てこれねーなら、オレたちが土蜘蛛を殺す！」
今回のことはリクオがけじめをつけるべきこと。
そうわかっていたからこそ、修行をつけるという牛鬼の言葉を聞いて待っていてくれたのだろう。
しかし、彼らは誇り高き遠野妖怪。
自分達の仲間も傷つけられた以上、やられっぱなしでいるわけにも、黙って見過ごすこともできるはずがない。
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作者名：エッグタルト | 作成日時：2024年3月7日 1時
