倒れるリクオ ページ3
「て…てめぇ、待てって言ってんだろ！！」
激昂して近づこうとする淡島達を気にせずリクオを殴りつける土蜘蛛。
「邪魔だ、のけ」
そのまま殴られ続けるリクオ。
その光景に、声を出せずにただただ立ち尽くすA。
やっぱり……私は無力だ……。
今ここでリクオの元へ駆け寄ることも、共に戦うことすらできない。
ただ傷つけられる兄を見つめながら立ち尽くすことしかできない己の無力さが歯痒い。
「ああ…あ…奴良くん…おお…おおお」
声を上げて駆け出そうとするゆらの前に十三代目が立ち塞がる。
「なんで止めんねん！！あんたが一度倒した奴やろ！？」
「倒したんやない…封じたんや」
そう述べるのは事実。
ぬらりひょんが羽衣狐を倒した後の誰もいなくなった京で、一月暴れまくった挙句全てのことに飽きた土蜘蛛を誑かして眠りにつかせた。
本人は、まさか四百年も封じられるとは思いもよらなかっただろう。
土蜘蛛はとてつもなく古い時代から関西を中心に暴れ回る大妖怪。
誰にも従わず誰も倒せず、土蜘蛛を現す言葉にこんなのが残っている…「もしやつが"空腹"なら遭遇してはならない」
「神も仏も妖も全部喰われる。奇跡は二度起こらん」
四百年前の出来事を話す十三代目に思わず言葉を失うゆら。
「いつまでやっている！！」
「リクオ様からはなれろ！！」
黒田坊や首無を始めとし、邪魅や他の妖怪達も土蜘蛛の体に刀を突き刺す。
「あん？待ってろ。百鬼残らず喰ってやる」
自分の体に刺さる刀の感触に振り返り、そう言い放つ。
土蜘蛛は四百年間封印されていた。
つまり、四百年間何も喰っていないのだ。
「順番に一人ずつな」
恐ろしい顔で振り返る土蜘蛛こ後ろでは、百鬼夜行の主であるリクオがボロボロの状態で倒れていた。
「こいつみてぇにな」
無惨な姿で倒れるリクオに言葉を失う一同。
お兄……ちゃん？
茫然と立ち尽くすAの目にはみるみるうちに涙があふれる。
父はある日、目の前であっという間に殺されてしまった。
まさか、兄までも目の前で失うことになってしまうのか。
「さぁて、次は誰にしようか」
そう言って辺りを見渡した土蜘蛛は、冷麗を指差した。
「お前…うまそうだ」
戸惑う玲麗を見て殺気立つ遠野妖怪達。
「いくぞ」
「待て！！誰がやらすか！！」
駆け付けるイタクや淡島よりも早く、土彦が冷麗の前に立つ。
「下がれ冷麗！！」
「土彦…」
ほっとする冷麗達に向かってキセルが振り下ろされた。
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作者名：エッグタルト | 作成日時：2024年3月7日 1時
