襲撃される花開院本家 ページ19
「羽衣狐様は生き肝をご所望である。特にお前たちのような能力者たちの生き肝をな…神にその身をささげられるお前たちがなんとうらやましい」
首から下げられた十字架をそっと唇に寄せる。
「ささげられぬ自分が呪わしい。できることならかわりたい…やがて死にゆく者へ、神よ…慈愛の光あれ」
両腕を広げそう言い放ったのは京妖怪しょうけら。
時間は羽衣狐の出産まで残り94時間。
「おお〜京妖怪。よう入って来たのう…！！花開院本家に来たからにはそれなりの覚悟があるのだろう」
後ろに大勢の陰陽師を連れて姿を現した二十七代目に歓喜の声を上げる。
「隊列をくめ！！」
二十七代目の指示に式神を発動して構えながら隊列をくむ。
「聖域に入ったことは後悔させてやろうぞ。花開院陰陽術呪葬の鎖！！」
文字の鎖がしょうけらの体に巻き付く。
しょうけらがフッと笑うと十字の形に花開院本家が斬られる。
「十字を見て畏れるのなら、それは、罪人の証。懺悔は終わったか」
屋根の上に立つしょうけらの手には先端が十字の形の槍のような武器が握られていた。
「これより裁きを始める」
「く…隊列を…組み直せー！！」
険しい顔でそれらを見つめた後指示を出す二十七代目。
「こ…この妖気…！！もしやあの時の妖か…！？」
怪我をした体で覚えのある妖気を感じて慌てて駆けつけた秋房の目に映ったのは、地面に膝をつく二十七代目の首元に武器を向けるしょうけらの姿。
「お前…生きてたのか」
自分を睨みつけてくるしょうけら。
「憑鬼槍！！」
怒りのまま向き合う秋房。
鋭い衝撃の後に停電した部屋の中で、青い顔で慌てふためく清十字怪奇探偵団一同。
「おい、お前ら。うるせーぞ！！寝らんねーじゃねぇか、ったくよー」
体を起こしてボヤく青田坊に不思議そうに動きを止めて振り返る。
「あーあ、小便してくらあ」
ガバッと立ち上がると扉の方へ向かう。
「ちょ…ちょっと倉田くん？外…今危ないよ？何かあったら…」
心配そうな顔をするカナの方を振り返りジッと見つめる。
「そんなにオレが心配か…？」
ゴソゴソと服の胸元を探る。
「喝！！」
骸の数珠を力を込めると、意識を失い床に倒れるカナ達。
その姿を見ると扉付近に立っていた陰陽師を足蹴にして部屋を出る。
「青田坊！あんたは清十字団守ってね！」
思い出すのは屋敷を出ていく前に氷麗と交わした会話。
そう告げた氷麗の隣に立つのは、不安を全身に浮かべて自分を見つめる奴良組のお姫様。
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作者名：エッグタルト | 作成日時：2024年3月7日 1時
