百鬼夜行の主 ページ13
時間は遡ってリクオが牛鬼に連れて行かれた少し後
「はいはい、さー封印に行くでー」
パンパンと両手を打ち鳴らしながら笑顔で言う十三代目。
「状況は何も変わってへんでー！！土蜘蛛に出会ったのは運が悪かったと思って！！進むでー」
元気よく声をかけるも、奴良組の妖怪達はシーンとしていて何も言葉を返さない。
「…バカにしてんのか？」
「こんな状態で共闘なんてできるかよ」
リクオもいないのに、何故陰陽師と一緒に戦わなければならないのかと愚痴をこぼす。
「な…なんやのんこいつら、やる気のない」
「いや、これが妖怪ってもんや。百鬼夜行は"主"がおらななりたたん。まがりなりにもあの子はこの百鬼夜行の主やったってことやな……」
リクオがいなくなった途端に急にやる気をなくす妖怪達に不満気なゆらだったが、十三代目の言葉にリクオのことを考える。
そして、想いを馳せるのはリクオのことだけではなく。
「Aは…」
それは、百鬼夜行の主の妹のこと。
「あの子も……まあ殺されはしやんやろ」
目にした力は確かに四百年前の彼女と同じ。
四百年後に生まれた奴良組の姫は確実にその力を受け継いでいた。
無傷で連れて来いと言われていたことからも、傷つけられるようなことはないだろうと予想はできる。
しかし、彼女は双子の兄とは違って普通の人間。
人間でも陰陽師のゆらや竜二のように霊力を持ち、妖達に立ち向かえる術を持っているわけでもない。
かつての祖母の不思議な力を偶然受け継いでしまっただけの心優しい少女なのだ。
不安を掻き立てられはするものの、ゆらにもやらなければならないことがある。
リクオを始めとした奴良組の妖怪達が彼女を救うことを信じることしかできない。
「ホラ！！何やってんのみんな！！リクオ様が戻ってくるときに悲しませたいの！？しっかり百鬼夜行守っとかなきゃダメだろ！！」
どうにかしなければと顔を顰める十三代目の耳に響いたのは奴良組の姉御的存在である毛倡妓の声。
「さー行くよみんな！！リクオ様の百鬼はオレが守んだって気持ちを見せてちょーだい！！」
毛倡妓の言葉に感心した様子で見つめる十三代目。
しかし、そんな毛倡妓でも遠野勢達までをその気にさせられるわけではない。
別行動だと告げるイタクに、自分にできるのはここまでだと痛感する。
代わりに大将になってもらおうとキョロキョロと辺りを見回すも、先程まで隣にいたはずの首無の姿が見当たらない。
「……首無？」
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作者名：エッグタルト | 作成日時：2024年3月7日 1時
