牛鬼の想い ページ42
問いかけるリクオに対し牛鬼は真っ直ぐな目で告げる。
「お前を殺してオレも…死ぬのだ」
そうして牛鬼はリクオに語る。
自分が人であった頃ー梅若丸であった頃の記憶。
いかにして自分が妖怪になったのか。
そして、リクオの祖父であるぬらりひょんと盃を交わすまでの過程を。
ぬらりひょんという妖にかなわぬと思わされたことを。
「それが…お前の祖父であり私の…親分だ…。私もかつては"人"だった。"生きたい"と…願う人間…だが…人間には…悪鬼に耐える力がないー」
そう言ってリクオの体を斬りつける。
リクオの体からは勢いよく血が吹き出す。
「それでもなお人であり続けるなら、私は自らをかけー葬るのみ。魔道に堕ちろリクオ。私のようにー人間を捨てろ。総大将になるのならば私を越えてゆけ、リクオ」
リクオに斬りつけられた牛鬼の体からも勢いよく血が吹き出す。
「…それで良いのだ…」
二人は同時に倒れる。
「リクオきけ。捩眼山は奴良組の最西端ーここから先奴良組の地は一つもない」
天井を見ながら話す牛鬼の脳裏には、自分の愛する奴良組の日常
が浮かんでいた。
そこへ飛び込んできた黒羽丸とトサカ丸は、床に飛び散った血と胸元を抑えて膝をつくリクオ、そして倒れ込んでいる牛鬼の姿。
そんな牛鬼を見て怒りを露わにする鴉達にリクオは手を出して止まれと合図する。
「この地にいるからこそよくわかるぞリクオ。内からも…外からも…いずれこの組は壊れる。早急に立て直さねば……ならない。だから私は動いたのだ。私の愛した奴良組を…つぶす奴が…許せんのだ。たとえリクオ、お前でもな…」
「兄貴…」
「逆臣・牛鬼！リクオ様に…この本家に直接刃を向けやがった…！！」
「当然だとは思わんか。奴良組の未来を託せぬうつけが継ごうというのだ。しかしお前には…器も意志もあった。私が思い描いた通りだった。もはやこれ以上考える必要はなくなった」
そう言って体を起こす牛鬼にの姿を見て慌てて声を上げる鴉達。
「リクオ様危のうござる！！」
リクオが振り返ると牛鬼は刀を振り翳していた。
「これが私の結論だ！！」
「牛鬼貴様ぁああー！！」
鴉達が駆けつけるよりも先に、リクオは牛鬼の刀を止める。
「ーなぜ止める？リクオ…」
止められた牛鬼の刀は壁の柱に刺さっていた。
「私には…謀反を企てた責任を負う義務があるのだ…なぜ死なせてくれぬ…午頭や馬頭にも合わす顔がないではないか…」
そう、牛鬼は己に刃を向けたのだ。
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作者名：エッグタルト | 作成日時：2024年1月15日 0時
