必死の抵抗 ページ28
必死に否定し続けるリクオだったが「本当は知っているはずだぜ。自分の本当の力を。もう時間だよ」
いつか夢で見た枝垂れ桜のところにいた男ー気がつけばリクオは彼と入れ替わり桜の樹のそばに立っていた。
「カラス天狗…みなをここへ呼べ…夜明けまでのねずみ狩りだ」
リクオは妖怪の姿へと変わっていた。
目を覚ましたゆらとカナは檻の中へと入れられていた。
その前にいるのは派手な椅子に座る旧鼠の姿。
「よう陰陽少女。どうだ…？ネオンの光の中…処刑される気分は…？あの…三代目のガキが…約束を破ったらな…」
「三代目…？旧鼠…アホなことはやめるんや！！えぇかげんにしい！！」
そう抵抗するゆらだったが旧鼠の部下に制服を引きちぎられてしまう。
旧鼠は時計を見て、その後檻の中の二人にいやらしく笑いかける。
「さて…そろそろ時間だな。ま…来ないなら来ないでオレはかまわんがな…。知ってるか…？人間の血はなぁ…夜明け前の血が一番ドロッとしててうめぇのよ。ちょうど…今くらいのなぁ…？」
そう言って舌舐めずりする旧鼠の言葉を合図に部下達が檻の中へと入って行く。
カナを守るため、そして陰陽師であるが故に立ち向かおうとするゆらだったが式神を奪われてしまってはなす術もなく。
「旧鼠…やめておいた方がいいと思うよ…」
旧鼠を止めようとする声は檻の外から響いた。
そこにいたのは、旧鼠の足下で後ろ手を縛られているAの姿。
「Aちゃん！？」
旧鼠は不敵に笑うとAの胸ぐらを掴み無理やり立たせる。
「お姫様は死にたがりか…？唯の人間であるお前に用はねぇ…そんなに死にたきゃまずはお前からだ…」
「私にそこまでの価値なんてないよ…。二人を解放してくれるなら、私が相手になってあげてもいいよ」
Aも負けじと笑みを浮かべる。
「なっ！奴良さん、あかん！」
抵抗もできずにそれでも尚助けようとしてくれるゆらにを安心させるために必死で笑顔を取り繕う。
祖父や兄には及ばずとも、妹もまたぬらりひょんの孫である。
「へぇ…唯の役立たずのお姫様かと思えば…いいぜ。まずはお前からだ」
そう笑みをこぼしながらAの服の前を勢いよく破き噛みつこうと牙を向け近づく旧鼠。
しかし、Aは近づいてくる妖気に暴れ出しそうになる心臓を抑えながら気づかれないように安堵の吐息をこぼす。
ほら、やっぱり来てくれたー。やっぱりお兄ちゃんは、奴良組の三代目だよ。
あたりに漂う霧とその中に佇む妖怪達。
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作者名：エッグタルト | 作成日時：2024年1月15日 0時
