旧鼠の脅し ページ26
その夜、リクオは廊下にいたところを小さなネズミに声をかけられ、ゆらとカナが連れ去られたと聞かされた。
二人がホストに連れて行かれたという、到底理解し難い話。
走りながら脳内では、先程のネズミが言った言葉が思い出される。
「だめです。リクオ様…ゆら様は陰陽師。みなが進んで助けるはずがございません。大丈夫…私の組の者がいますから、どうぞお一人で…」
一番街に辿り着いたリクオは、ここだと言われた店に目を向ける。
そこは、到底中学生が入るような店ではない。
不思議に思っているその隙に、変化したネズミによって噛まれてしまい、リクオは意識を失った。
目が覚めたリクオの目に映ったのは、高級そうなソファに座るホステスの格好の男たち。
「よぉ、お目覚めかい。自称…三代目さんよぉ…」
まだ頭が上手く働かないリクオだったが、『三代目』という言葉に思い当たるのは
「まさか…君、妖怪？奴良組の人なの？」
しかし、その言葉に腹を立てたのか他の男に頭を蹴り飛ばされてしまう。
「今てめー旧鼠様を"下"に見やがったな。誰がてめーなんかの"下"につくかよ、バーカ。旧鼠様はこの街の夜の帝王なんだよ！！」
「帝…王…？」
「おいガキ…よく聞け。今…妖怪の世界はなぁ…古い時代と変わり多種多様な"悪の組織"になってんだ。オレたちはもっともっと"悪行"をでかく展開する。そのためにゃあ…おめーみたいなヌルい奴に継いでほしくないんだよ」
そこで見せられたのは、静かに眠るゆらとカナの姿。
「カナちゃん！？花開院さん！？」
「組のためだぜ。てめぇの率いる古い妖怪じゃこの現代は生き残れねぇ。オレたちが…奴良組を率いてやる。おめーは手を引け…三代目を継がないと宣言しろ！！いいな！？」
「三代目！？そんなのどーでもいいよ！！いますぐはなしてあげてよ！！2人を！！」
リクオにとっては、三代目よりも2人の安否の方が気に掛かっていた。
その言葉に腹を立てる旧鼠は、逆上してリクオを殴りつける。
「軽々しく言ってんじゃねーぞなりそこないが！！どんだけ重い代紋かわかってんのか」
「本当だ…いらないよ」
「本当だな…よしわかった。だったら今夜中に全国の親分衆に…"回状"を廻せ！！もし破ったらこの娘ぁ…夜明けと共に殺す！！」
そう告げた旧鼠は、次の瞬間ニヤリと笑って一人の少女の首を掴む。
「こいつもだ…」
掴まれているのは、リクオにとって誰よりも大切な存在だった。
「…お兄ちゃん…っ、だめ、だよ…」
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作者名：エッグタルト | 作成日時：2024年1月15日 0時
