人質 ページ25
Aたち3人は、旧鼠たちによって路地裏の奥へと追い込まれていた。
「なに…？これ…？ゆらちゃん…」
怯えてゆらの背中に隠れるカナ。
その隣で、Aは静かにその状況を見つめていた。
どうしよう…私じゃ、何もできないし…。
「妖怪変化…昼間…説明したとおりよ。こいつらは…獣の妖怪」
「おとなしくしてりゃあ…痛い目見なくてすむぜぇ…」
そう言って汚い笑いを浮かべる旧鼠たちに、ゆらは不適な笑みをこぼす。
「…ねずみふぜいが。粋がるんちゃうわ。後ろに下がって家長さん。Aさんも」
「やれ、お前ら」
旧鼠の指示に、その部下の妖怪たちが真っ直ぐに向かってくる。
「禹歩、天峰、天内！！天衝、天輔天任。乾坤元亨利貞、出番や！！私の式神！！貪狼」
そう叫んだゆらの手元の紙から召喚されたのは狼な姿をした式神。
貪狼とよばれたそれは、あっという間に鼠の妖怪たちを喰い尽くしていく。
「こ…こいつ…式神を使ってやがる…術者だ！」
「陰陽師だ！！それも…生半可ねぇぞぉ！！」
「旧鼠さんこの女一体…」
「旧鼠か…仔猫を喰らうおおねずみの妖怪…人にバケてこんな路上に出るなんて…」
旧鼠…？それって、確か昔…。
その名前にAは目を見開く。
旧鼠は笑みを浮かべてゆらに近づくが、ゆらはその手を振り払ってしまう。
「さわるなネズミ」
「…あ？」
その言葉が気に障ったのか、旧鼠は袖をまくり腕時計を見せると指をパチンと鳴らした。
それがら合図だったのか、カナを小さなネズミが襲う。
「キャアア！！いやっ…ネズミが！？」
「慌てて式神に指示を出そうとしたゆらだが、旧鼠にはいごをとられ、その隙にネズミたちはカナの服の中にまで入り込む。
仕方なくおふだをしまったゆらさ旧鼠に殴られて気絶してしまう。
「お前ら丁重にあつかえよ。こいつらは大事なエサだからな…」
そう言って運ばれる二人を見つめるAに、旧鼠は怪しく微笑んで距離を詰める。
「初めまして、奴良組のお姫様」
「…二人を…どうする気？三代目…お兄ちゃんに用事があるなら、二人は関係ないでしょ」
怖くて膝が震えるのを誤魔化すようにぎゅっと拳を握りしめるAの姿にニヤリと笑うと、旧鼠はその耳に唇を寄せて囁く。
「大事なお友達を傷つけたくはないでしょう。何の価値もないお前だが…二人に手を出して欲しくなければ…わかるよな」
それは明らかな脅し。
ぐっと唇を噛み締めたAは、静かにその後に続いて歩き出した。
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作者名：エッグタルト | 作成日時：2024年1月15日 0時
