旧鼠 ページ24
奴良組からの帰り道、ゆらは制服姿で繁華街を歩いていた。
そんなゆらにホステスの風貌の若い男たちがこぞって声をかける。
「ゆらちゃん！」
「あ…えと…家長さん…？」
「この時間は危ないよ、この辺。いこっ、どこ住んでんの？」
カナはそんなゆらを見かけて明るく声をかけ、さりげなくゆらを誘導する。
「…私って…まだ修行が足りひんわ…。本当にいると思ったのに…奴良くんに失礼なことしてもーた…」
ゆらはそう言って肩を落とす。
隠れていたから見つからなかっただけで、ゆらが妖怪の気配を感じ取ったのは何も間違いではない。
そんな二人に、化猫組へ顔を出していたAが偶然通りかかる。
「あれ？カナちゃんと…たしか…花開院さん、だったっけ？どうしたの、こんなところで」
「Aちゃん！？そっちこそ、こんなところでどうしたの？」
だれ？と言う顔をするゆらに、カナは小声でリクオ君の双子の妹だと告げる。
その言葉にゆらは軽く目を見開く。
「奴良くんの…。あれ…けど、さっきは…」
そう、Aはリクオと一緒にはいなかった。
そのことに遅れながら気づいたカナも、不思議そうな顔をAに向ける。
「Aちゃん、何してたの？」
「あー…ちょっと、友だちのところに行ってたの。この間の清継くんの家には一緒にいたから、みんなが来るのはわかってたんだけど…あんまり騒がしいの得意じゃないし…」
そう言って肩をすくめるAに、ゆらはますます申し訳なさそうに肩を落とす。
怪我した猫を見つけたから、化猫組のところに連れて行ってただけなんだけど…まあ、友達っていっても間違いじゃないよね…。にしても…余計に落ち込ませちゃったかな。
そんな三人の後ろから響いたのは若い男の声。
「わっ、女の子が落ち込んでるよ〜。ひーろった！オレの店まで持って帰っちゃおーっと」
その軽い声に怪訝そうに眉を寄せゆらとAの手を引くカナ。
そんなカナとは少し違った意味だが、Aも警戒心を高めていた。
しかし、歩き出そうとした3人の周りを取り囲むホステスのような格好の若い男達。
「下がって…家長さん」
「つれなくすんなよ仔猫ちゃん♡」
そう言った男たちの姿がみるみるうちに変わっていく。
「アンタら…三代目の知り合いだろ。夜は長いぜ。骨になるまで…しゃぶらせてくれよォォ♡」
その顔はまるで鼠。
ゆらが説明していた、知性はあっても理性はない獣妖怪ー旧鼠である。
「長い夜の始まりだ」
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作者名：エッグタルト | 作成日時：2024年1月15日 0時
