転校生 ページ17
翌朝、朝ごはんを食べるために先についたリクオの前には立派な舟盛りが置かれていた。
困惑するリクオに対し、カラス天狗は鴆の屋敷であった出来事に対する感動を涙ながらに語る。
そこへ他の妖怪も集まり宴会だと騒ぎ始めるのを聞きながら、リクオは身に覚えのない話に呆れ気味だ。
「何の話？知らないよそんなの…全っ然おぼえてないし。朝から宴会なんてかんべんしてよ。ただでさえ…こっちはなぜか寝不足なんだから」
昨日の話を覚えていないリクオは、二日酔いでふらつく足もそのままに家を出て行った。
学校に着いたリクオとカナが下駄箱で挨拶を交わしていると、後ろから清継と島がやって来た。
「君たち…見たよねぇ！見たよねぇ！たしかに居たはずなんだ…旧校舎には…ぼくが求めていた妖怪が！！なのに気がついたら公園のベンチで寝てたんだ！！」
そう言いながら、興奮した様子でリクオの制服の首元を掴んで激しく揺さぶる。
「不良と見まちがえたんじゃないかしら？たむろしてた不良がおどかしてきたじゃない！？」
後ろから響いたのは、いるはずのない声。
隣には、倉田に化けた青田坊とAの姿も。
「アレ？もしかして気絶でもしちゃってたの？情けないわぁあー」
「そ、そんな…してないさ！！気絶なんて！！あーおぼえてるおぼえてる！！」
「そーよ！そう簡単に学校に妖怪なんて出ないわよ！」
そう笑顔で返す雪女を見るリクオの目は、完全にお前が言うかと言っていた。
納得して？去って行った清継の姿を確認すると「あ、若！！一人で勝手に登校しちゃこまります！はい、母様のお手製お弁当！！」
そう言って若菜からのお弁当を手渡す雪女を、リクオは慌てた様子で連れて行った。
そんな様子を不思議そうに見つめるカナは、苦笑いで立ち止まっているAに気がついて明るく声をかける。
どうせ…若って呼ぶなとか、そんなところだろうな…。
「おはよう、Aちゃん。あの子、リクオ君と知り合いなの？」
お兄ちゃんのバカ…。そりゃ急に連れて行ったら、何事って思うよね…。
「う、うん…おはよう。幼なじみみたいなもの、かな」
「へ、へー。そうなんだ…」
訝しげに二人の去って行った方を見つめるカナたちに遠慮がちに声をかける少女。
「あの…ごめんなさい。職員室はどこですか？勝手がわからなくって」
「ああ…2階だよ。この棟の…」
教えたカナに、少女は笑顔を浮かべた。
「おおきに」
リクオたちのクラスの転校生ー花開院ゆらである。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 13人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：エッグタルト | 作成日時：2024年1月15日 0時
