鴆の屋敷 ページ15
夕方ー
台所で妖銘酒を見つけた青田坊は、それを他の妖怪達と分けようとしていたところで後ろから伸びて来た手に奪われた。
「鴆君にあやまりに行くんだ！結果的に、無理強いさせちゃったことは悪いんだし！」
手にしたリクオの言葉に驚くカラス天狗だったが、次の言葉に肩をすくめた。
「それに…ちゃんと説明しなきゃ！ぼくが人間だってこと！きっとわかってくれるよ！三代目は継がないって！」
もうダメかもしれない。
火に油を注ぐことになるかもしれないと。
こうして、カラス天狗はリクオと共に鴆の屋敷へ向かうことを決意するのだった。
その頃ー
鴆の屋敷では、鴆の部下である蛇太夫が鴆に反旗を翻していた。
燃え盛る屋敷の中で鴆は自分と対峙する蛇太夫と向き合う。
「蛇太夫！？てめぇどういうこった！？盃かわした忠誠心はどこいったー！！」
怒りのまま刀を抜く鴆だったが、体が耐えきれずに吐血してしまう。
「忠誠心…？何のことやら…。ただ…私はあんたの下につくのが一番のっとりやすいとそう思って……配下に加わっただけですよ！！ははは…なさけねぇ。それでも妖怪か！！せいぜい、軟弱鳥は大げさに羽根ちらしながらくたばんなー！！」
蛇太夫はそう言って鴆に牙を向け襲いかかる。
そんなこととはつゆ知らずー
リクオ、カラス天狗、そして何故かAを乗せて朧車は鴆の屋敷へと進んでいた。
「もう着きますよ、若」
「う…うん…」
「いや…なんで私まで…」
あの後、お菓子を食べながら宿題をしていたAは、突然部屋へとやって来たリクオに抵抗する間もなく連れ去られ、気づけば朧車の中にいた。
「特に深い意味はないんだけど…Aも久しぶりに会いたいかなって」
「…え、いや…私は…」
言葉に詰まるAを、不思議そうに見つめるリクオたちの視界に飛び込んできたのは、どこか見覚えのある羽根。
どういうことかと眉を寄せる3人に、朧車が絶叫する。
「鴆様の屋敷が…わっ、か…火事ですよぉー！！わー…ど…どうします！！？」
鴆の屋敷は言葉通り火に包まれていた。
「そ…そのまま！！」
「え！？」
「何で！？」
「そのまま…つっこんでえぇ！！」
困惑するカラス天狗や朧車をよそに、リクオは屋敷へと突っ込めと叫び返した。
朧車は驚きの声を上げるもその指示に従いそのまま鴆の屋敷へと突っ込んでいく。
困惑するAは、そんな衝撃から身を守るようにリクオに抱きしめられていた。
「鴆くん！？」
降りたリクオが目にしたのは、刀を手にして膝をつく鴆の姿だった。
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作者名：エッグタルト | 作成日時：2024年1月15日 0時
