蜂と蜜の間で。～ Ren.M ～ (ページ36)

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そう思っていた。

「…と言うと思った？」

『…え？』

「俺、言ったよね？欲しいものは必ず手に入れる主義だって。」

『コウ、タ…？』

「あの時さ、Aが逃げてっちゃった時、やっちゃったなって思った、もちろん。
でもさ、自分が失敗するなんて有り得ない。
あの時は、俺の運が悪かっただけ。」

俺の運が、悪かった…？

「Aの性格上、俺に呼び出されたとしても、仕事場で言われたら断れない。
しかも、後輩伝えの呼び出しなら尚更。
会いたくないけど、仕事での呼び出しなら、断る理由がないもんな？」

『…ゆりちゃんを利用したの？』

「あの子はAと仲が良いから。
ちょっとあの子に気があるような男を演じれば、すぐに協力してくれたよ。
自分の手に入れたいものを手に入れる為ならどんな手段も選ばない。
例え、Aの後輩を使おうとね。
まあ、人なんて所詮、俺の思い通りにさせる為の道具にすぎない。
あの子も今回で用無し。」

『…最低。』

「最低？ははっ、笑そうだよ、俺は最低だ。
でも、Aがヨリを戻すという選択をすれば、俺はこんな奴じゃなくなる。
Aとっても得じゃないか？
俺には、地位も権力も、そして富だってある。」

『地位と権力…？コウタは、私らと同じ普通の会社員でしょ？』

「はっ、笑それは違うよ。
俺はAが担当している雑誌の編集長の息子だよ。」

『え…？』

「これで何もかも答えが分かるはず。
Aが突然、この雑誌の取材担当になったこと。
そして、俺があの日このスタジオにいたこと。」

『…全部、コウタが仕組んだこと…。』

「せいかい。親父に頼んだら、すぐに了承してくれてね。話が早かったよ。
全ては、俺がAを手に入れる為だよ。」

『そんな…。』

突然、担当になったことにはもちろん驚いた。
前の担当者さんだっていたわけだし。
けど、一番の驚きは、

あの9人との楽しい時間も、
コウタに仕組まれていなかったら、私には訪れることがなかった

" 非日常 "

だってこと。

「さっ、タネ明かしも終わったことだし、もちろんAの答えは決まってるよね？」

『私の…答え。』

「まあ、俺が編集長の息子だってことは、断ったらどうなるかは分かってるよね？」

断れば…。

それは遠回しに担当を外すこと。
そして、9人に危害が及ぶことを表していた。

自分の身と、9人の笑顔。

どっちをとる、自分。

そんなの最初から答えは決まってる。