My House【短編集】

ー ページ48

『……ヌナ…』






『心配しないで？……ちゃんと、彼と話し合ってみるから。

このまま、結婚は……しない。』





微笑むヌナ






『……そっか。そうだね。まずは、話してみるのが、いいね』





俺が微笑むとヌナも口角をあげる




『あ、これ…』





俺が、ポケットに入れた指輪を取り出すと






『……うん。ありがとう』



右の掌を出したから、



その手を握って、手の甲を向けた



ゆっくりと、薬指に指輪を通す



『………』



………ヌナが、ちゃんと幸せでいられるように




そんな願いを込めて。




ヌナの顔を見ると笑ってた



だから、俺も笑った




………結局この日が、俺がヌナと会った最後の日だった。




このあと、ヌナがどうしたのか、ヌナがどうなったのか何もわからない




ただ、いつの間にか隣の部屋は空っぽで




うちのドアノブに紙袋がぶら下がっていた




【ウヨンくんへ

ありがとう】



そう書かれた手紙と、



シャンプー




それを使うと

ヌナのキレイな髪から香ったあの香りがして、

俺をまだときめかせる。



………俺と、ヌナが【２人】と呼べることはなかったし



俺と、ヌナが同じ気持ちになることはなかった。




例えば、俺がもっと早くヌナに



話し掛けたり、理由をつけて一緒にいたなら



何かが変わっていたのかな？




まぁ、さ


俺は、それでもヌナと出逢ったのは【運命】だったと思ってるよ。




...fin

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