ストリートピアノ ページ14
ポロン…♪
約束通り、ラーメンを食べ終わってから
タクシーに乗って、小さな駅までやってきた。
駅構内に、設置されたストリートピアノ。
この時間には、座るヒトは誰もいない。
通行人も疎らで、ジュノの存在には誰も気が付かないかもしれない。
ホッとしながら、
ピアノの前に座って、軽く音を出して
チラッとジュノのいる方を見ると
少し離れたベンチに、帽子を深く被ってマスクをしたジュノが、
足を組んで座ってる。
………あんな風に座っていても分かるスタイルの良さ。
隠しているつもりでも、漏れ出ているオーラ。
……とにかく、早く弾いて早くホテルに戻ろう。
｢すぅ。｣と息を吸って
♪〜
奏でた音色。
ショパンの子犬のワルツ
ベタだけれど、明るくて心まで跳び跳ねるようなこの曲が、昔からすごく好きだった。
弾いていて楽しくなる曲。
聴いていても楽しくなる曲。
〜♪
私の奏でるピアノに、少しずつ足を止めてくれるヒトが増えていく。
帰宅途中な感じのサラリーマン
遊んできた帰りのような学生
クラシック音楽にも、足を止めてくれるのは素直に嬉しかった。
ポロン…と、静かに演奏を終えると
パチパチ…と、拍手が起こる
｢あ、ありがとうございます｣
椅子に座ったまま、拍手を贈ってくれる人たちへお辞儀をした。
顔をあげると、ベンチから拍手を贈ってくれるジュノも見える。
マスクで見えないだろうけど、私の口角は上がっている。
｢あ、あの｣
その時、１人の女性に声を掛けられた
｢あ、はい！｣
｢あの……たぶん覚えてらっしゃらないと思うんですけど……｣
｢はい？｣
｢私、2016年の冬に、１度だけ、あなたにリクエスト曲を弾いていただいたことがあって……｣
……2016年………
今から、6年前……
ちょうど、ストリートピアノを始めた頃……
不意に思い出した、その時の事。
｢あ！たしか……｣
｢あの、ジュノの【キミの声】をリクエストした……｣
｢そうだ！！そうですね！｣
そうだ！この女性のリクエストで、初めて私はジュノの存在を知ったんだ。
なんて、すごいタイミング……
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作者名：hana | 作成日時：2022年8月25日 1時
