Glutonny ページ9
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お義母さんのお昼ご飯を作るから手伝ってくれますか、と言うとしっぽがぶんぶんと振っているのが見えるくらい目を輝かせたジョンイン神父様に思わず笑みがこぼれしまう。
どうぞ、と声をかけてリビングに案内すると手土産だろうか、果物の詰め合わせを持ってきてくれたらしい。毎日なにかしら持ってきて誘ってきてくれてきたのだろうかと考えると胸がチクチクするが、それでもやはり義母から日中離れようと思えなくて。
ありがとうございますと果物を受け取ると何をして良いのかソワソワと聞いてくるものだから、初日に見たしっかりしていて隙がないような神父様とは同じ人物に前なくて頬が緩んでしまう。
「今から、お義母さんのお昼ご飯を用意するので手伝ってくれますか?」
「もちろんです!ただ、その…僕あまり料理は得意じゃなくて」
「大丈夫です、切るだけで十分なので」
そう言って昨日お義母さんからリクエストがあったクリームシチューを作り始める。具材はできる限り小さく切って欲しいとジョンイン神父様に言ったものの、想像していたより彼は料理…というか包丁の扱いが下手らしくぷるぷると震えながら一生懸命野菜を切ってくれた。お皿に盛られた綺麗とは言えない、不格好な野菜たちを見てしょんぼりとするジョンイン神父様に慌ててフォローを入れるが彼に不得意なことがあったことが嬉しくて声が少しだけ跳ねてしまう。
「…なんだか嬉しそうですね?」
「ぁ…気分を害されたらごめんなさい…。神父様にも不得意なことあるんだなぁとおもって。完璧な隙のない方だと思ってたので、親近感沸いてしまって…すみません」
「なら、良かったです。僕は料理も下手だし頑固だし…球技もどちらかと言えば苦手よりです。いつも子どもたちと遊ぶんですが彼らの方が上手で。」
「そうなんですね…意外です、とっても。同い年なのにしっかりされて皆さんからも信頼を置かれてたから」
完璧人間なのかと思ってました。そう言うとジョンイン神父様はふふっと口角を上にあげて皿の上にある努力の結晶の野菜を指さした。
「完璧な人間なんて、この世に居ないと思いますよ」
「…それは、キリスト教の教えですか?」
「いえ、これは僕の自論です。…Aさん次はどうしたら良いですか?」
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作者名:おむすび | 作成日時:2023年7月23日 22時