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子どもたちとさっきまで遊んでいたのか少し砂の着いた服を手で払いながら私の方に向かって歩くジョンインくんは、よっこらせ、なんてジジくさい掛け声をしながら私の横に腰を下ろした。心配性のジョンインくんは自分が羽織っていた上着を私の肩にかける。別に寒くはないのに相変わらず優しいな、なんて思いながら彼の顔を見ると愛おしそうに私を見る瞳と目が合う。


「もう3ヶ月も前なんだね、結婚式挙げたの。時間経つの早いなぁ」

「早いね、とっても」


膝に置いていた左手を取られ、ジョンインくんの両手に包まれて手の甲を撫でられる。
互いの左手の薬指には1粒のダイヤが埋め込まれたお揃いの指輪が収まっていて、夕陽に当てられキラリと光った。

─ジョンインくんと、3ヶ月前に結婚をして私は彼の妻となった。
余命半年と言われていたお義母さんはやはり体調が良くなることは無く、私たちの結婚式を見届けた後すぐにこの世を去った。
ジョンインくんと幸せになるんだよ、と私に何度もそう願うように伝えてきたお義母さんは何処か満足そうで、やっと親孝行が出来たのかもしれないと彼女の安らかな顔を見て思った。


神父は結婚することが出来ない。

ならば何故、私はジョンインくんと結婚出来ているのか。
答えはシンプルで彼は私を初めて抱いた次の日に神父を辞めたからだ。ああ、私はまた罪を重ねてしまったのだと絶望した。私が彼に恋心を抱かなければ、愛を知らなければ、拒んでいれば。彼が神父を辞めることもなかったのに。
そう後悔してもジョンインくん自身の決意は固く、「Aは悪くないよ、自分で決めたんだし僕はAと一生を過ごしたいと思ったから。だから結婚しよう」と毎日毎夜かけて呪文のようにまじないのように言われ、ついに私は折れてしまった。


街の人たちも教会の人たちもいきなりの事に慌てふためいたが、ジョンインくんの兄のような存在であり権力を持っているらしい神父さんがその場を収めてくれ新しい神父さんを手配してくれて一件落着になった。

結婚式は街中の皆がお祝いしてくれ、その場を収めてくれたバンチャンという名の神父さまが私たちの結婚式を取り持ってくれた。バン神父の立場であればきっとジョンインくんが神父をやめる理由となった私の事は気に入らないはずなのに、彼は「ジョンイニと幸せに暮らして欲しい」と暖かい優しい顔でそう言ってくれ、そりゃどの人間もどの地域の神父も彼に信頼を置くよなと思ったのは記憶に新しい。

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作者名:おむすび | 作成日時:2023年7月23日 22時

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