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眉をクイッとあげて煙をこちらに吐くおじさんに首を縦に振って頷くと、少し考えたような素振りをみせて隣の椅子に座るようにジェスチャーされる。なにかまずいことでも言ったかな、と思いながらも彼の横に座るとでっぷりとした腹を撫でながら口を開いた。
「Aちゃんはそんな現を抜かすような子だと思っていなかったんだけどねぇ…。血は繋がってないが親子ってのは似るもんなのかねぇ」
「は、なにを…」
「若い男が居るからって、夢中になってる場合かと言っているんだよ。誰に住まわせてもらって誰に食わせてもらっているかよォく考えて過ごすと良い。Aちゃんがすることは、家の事とお義母さんのお世話だろう?男と毎日一緒に遊んで暮らすことじゃないさ」
なにを、言っているんだこの目の前の男は。
ふぅ、と白い煙を吐きながら気持ち悪いねっとりとした目線を私に寄せる男に吐き気がしてくる。私だってジョンインくんにうつつを抜かしているつもりではないし、彼と過ごす日々は楽しいけれど彼だけでなく子どもたちやこの街の人達との関わりが楽しくてしているのに。
尚もネチネチと言ってくる男に反論しようと思ったが父の顔が頭に思い浮かぶ。
反論して抵抗した所で、男の力には勝てない。溢れ出る怒りをグッと抑えて拳を握りしめ、どうにか冷静になろうとするもやはりどうしても納得がいかなくてつい「彼は神父様です」と反論してしまった。
「神父だろうが関係ない、神父以前に男は男だ。…賢い君なら、分かるね?今私に逆らうと君たち親子は行くあてもないんだから」
ジョンインくんの癒される笑顔とは違い、嫌悪感しか感じられない笑みを浮かべて自室に戻るおじさんに自身が何も出来ない無力さを実感してしまう。ああ、ここでも私たちは男の言いなりになってしまうのか。
暴力は振るわない男らしいがそれでも父親を思い出してしまうには十分だった。家の事だってお義母さんの事だって私は全うしているはずだ。洗濯物も買い物もお義母さんのご飯も…それからおじさんのご飯も。おじさんに恩義を感じていたから私のできる家事は全てしてきたし、現を抜かしていた訳じゃないのに。
それでもやはり住まわせてもらっているという事実は変わりないので、私が反論したり反感できる立場ではないため怒りを飲み込んで急いでご飯を作りお風呂を終えてベッドに入り込む。
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作者名:おむすび | 作成日時:2023年7月23日 22時