君に来世はない (ページ15)

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Envy ページ15

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全てが上手くいっているように思えたある日再びお祈りをする機会があって教会に行き、十字架に貼り付けられたキリストを前に手を組んで祈りを捧げようとする。

今日もお義母さんの体調が幾分かマシでありますように、子どもたちが元気に過ごせますように、ジョンイン神父様と平和に過ごせますように。そんな事を心の中で復唱していると、ふと教会の外から子どもたちの声が聞こえた。2人くらいの兄妹だろうか、楽しそうな声がして自然と頬が緩み子どもたちの声をなんとなく聞いてボーっとする。

｢あ、お父さん！今日は病院いったの？｣

｢嗚呼、定期検診だから大丈夫だよ｣

｢パパ早くあそんで！｣

おとう、さん。何となく聞いていた男の子のお父さんという言葉が頭の中をグルグルと回る。お父さん、おとうさん。私の、お父さんは。

ここの村にきてから周りが暖かくて私が犯した罪を忘れていた。いや忘れていたと言うよりは蓋をしていたに近いだろうか。父親が見せた助けを求め苦しみ絶望に染る顔が頭を支配して上手く息が吸えなくなってしまう。私は実の父親を見殺しにしたのだ、そんな女がよくこうして他人の幸せや義母の幸せを祈れたものだ。きっとキリストも呆れてものも言えないだろう。
息が詰まり座っていることもままならず、床に崩れ落ちてしまう。冷や汗は止まらず、涙で視界が歪んで過呼吸になってくる。はっはっと上手く息が吐けずに苦しくて、それでも誰かに助けを呼べることはできなくて。

あの時に私の名前を呼んだ父親の声がずっと脳内に響く。

あの時、救急車を呼べば病院に連れていけば俺は助かったのに、実の父親を見殺しにしたんだお前は。俺の事を忘れて何を呑気に毎朝起きて男と連れて子供たちと遊び幸せになろうとしているんだ、お前は、一生幸せになってはいけない存在なんだ。そもそもお前なんかが居なければ───

私に届くはずもない死んだはずの父親の声がずっと頭を支配して床に涙と汗のみずたまりが出来ている。まともに声を出すこともできないでこのまま死んでしまうのだろうかと思った時、脳内で父親の声がかき消された。