君に来世はない (ページ12)

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笑うと少し浮き出る頬に、口角がきゅっとあがる大きな口、艶々とした黒髪を治す仕草、恥ずかしいと手を口元に持っていく仕草。洗い物をしながらも考えるのはジョンイン神父様の事ばかりだった。本格的に、ダメかもしれない。
明日からもきっと彼は家に色々誘いに来てくれるだろうが、何としても断って彼に近付かないようにしないと。そうでなきゃ、私自身が狂ってしまう。

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その後もやはり彼はめげずに家に来ては私を保育園に行かないかと誘ってくれた。
本心を言うならば行きたいと、一緒に丸一日を過ごしてみたいと本能がそう告げている。ただ私の理性は仕事をこなすようで、私なんかが彼を汚してはいけない、彼はこの村の太陽なのだから、と警告音を出し続ける。

そろそろ諦めてくれないかな、と思っていたある日のこと。
丁度10時になる頃合いだろうか、家のチャイムがなり返事をするとやはりジョンイン神父様だった。今日はどう断ろうかと考えていると普段はこの時間は寝ているはずのお義母さんが起きてきてインターホン越しに｢今日はAと一緒に遊んでやってくれる？｣と彼に言ったのだ。

｢お義母さん！？｣

｢いいじゃないの。私のことなら気にしないで大丈夫だから、最近元気なのよ？ほら、行っておいで玄関まで送ってあげるわ｣

｢ちょっと…！？｣

やだよ！と断ろうとしたが、楽しそうなお義母さんの顔を見て言葉を呑み込んだ。見送るだけ、と言っていたくせにちゃんとドアを開けてジョンイン神父様と談笑していつの間にか仲良くなっていて。

｢Aをお願いねぇ、この子、とっても素敵な子なのよ｣

｢はい、存じてます。今日はAさんをお借りしますね｣

ヤダほんとにイケメンじゃない…と嬉しそうにするお義母さんに手を振って家を出る。あれだけ元気なら今日は容態も悪化することは無さそうだし…今日くらいはいいかな、なんて。
誘いにのったのが余程嬉しかったのか足取りが軽く花を飛ばすようににこにこと微笑むジョンイン神父様を見てこちらも少しだけ嬉しくなる。

彼に連れられてきたのは保育園だった。確か、私にシロツメクサの花冠とか素敵なものをプレゼントしてくれた子達が居る保育園、らしい。そんな所に私が訪れて大丈夫だろうかとソワソワしていると、少し前を歩いていた彼が歩みを止めて隣に来る。どうしたのだろうと首を傾げると、腕どうしが触れるか触れないかくらいに近付いてきて。
えっ、と驚き声を上げると彼は眉を少し下げて笑った。