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過去:
彼は初等教育場ではまあそこそこの悪だった。野球をしている時にうっかり窓ガラスを割ってしまったり、下級生をいじめていた上級生を泣かせてしまったり、面白いかと思って花壇にダイビングしてみたり……等々。とにかく元気が有り余っていた。
さてそんなある日、彼は花瓶を割ってしまった罰で渡り廊下の掃除を命じられた。あらかた終わったが監視役の先生がいなくなってしまっており、どう暇を潰そうかと思っていると、視界に渡り廊下の向こう、そう言えばいままで入ったことない部屋が目に入った。暇くらいは潰せるか。そう軽い気持ちで入ったその部屋は、図書室だった。
うげえ本かよ、と思った彼だったが、とりあえず目に付いた本を手に取って一、二とページを繰った。ーーするとどうだ。教科書にあるのと同じ文字のはずなのに、ビックリするほど頭に入る。面白い！ 彼は夢中でページを捲り、四分の三ほど読み終わってふと視線を上げると、部屋はすっかり暗くなっていた。そして足音。「そんな所にいたのか」と来たのは、監視の先生だ。
「お前が本とは珍しい。明日は大雨か？」
「うるせー。それよりちょっと待ってよ先生、もう少しで読み終わるから」
「じゃあ借りて帰りな。大切に読めよ」
「だって、お前が文字に触れられるのなんて今くらいだろうからな」
先生の一言に、彼は目を丸くした。
「……何で？」
「何でって、この前授業でやったろ。才人しか、文字には触れられないんだよ」
マジ？？
そうして気づいて以来、彼はなるべく方向性を改めた。そして勉学にも励んだ。もともと頭は悪くなかった上に、積極的に先生や上級生を頼った。頼られて悪い気がする者はいなかったようで、特別に補習をしてもらうこともあった。ーー結果、彼は才人にこそなれなかったが予備隊に入隊することはできた。
最初に配属されたのは国家監視部隊の初等教育の部署。簡単に言えば教育場の先生だ。社会を担当していた彼は子供たちに繰り返し言った。文字は賢い人のためのもの。大衆は触っちゃいけない。そうして叡智を守る偉大な決断。
本当にそうかぁ？ 年に一度は言いそうになったがどうにか堪えていた。不確実な前に声に出してはいけない。きちんと研究してからにしなくては。
そうして気持ちが膨らんだ彼は、25になる年に昇華隊への配属を願い出た。そしてそれは受理され、その年に昇華隊へ入隊。
堅実に功績を重ねていったが派手なものはなく、現在に至る。班長には就任3年目。
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