＊ ページ33
「なあ、あったわ。他に言いたいこと」
ヴァイスに相槌を打たせるまもなく、彼は続ける。
「俺、何のために頑張ってたんだっけ」
「才人になるためだろ」
「毎回親父さんが干渉できる訳じゃないはずだ、まだチャンスはある」
「それにしてもムカつくな、何様だってんだ」
月並みな言葉なら、幾らでも生成出来た。でも全て、喉まで達することなく消えた。
「──けど！」
どうにか引き留めようとして言葉を捻り出した先には、もう誰もいない。ただ暗闇が、政士の心中を映しこんだような先の見えない暗闇が広がるだけだった。
立ち上がろうと地に手をつくと、ちょうど煙草の箱が置いてある場所だった。それは、ヴァイスの重みで更に潰れる。
『それ、高いやつなんだから』
──いつだったか。ヴァイスがある日偶然、政士の父親とすれ違った時、この煙草と全く同じ臭いがした。そんなことを、ふと彼は思い出した。
もしかしたら、政士は全て知っていたのかもしれない。その上での彼ができた最大の反抗が「煙草を盗むこと」だったとしたら。正直に言って人間的ではない。もっと怒るべきだ。もし、その怒る機会を摘み取ったのが自分だとしたら。今日に限って、ヴァイスの頭はよく回った。
そのまま箱を握り潰しながら、ヴァイスは政士が消えていったであろう道を辿る。けれど、政士の姿はどこにもない。
何故止めた。何故彼の思うままに行動させてやらなかった。それよりも、何故俺はあの時点で政士の親を殴らなかった。いや、彼の20年間分を振り返れば、半殺しにしてもお釣りが来る。俺が手を汚すことで政士が解放されるなら、喜んでやるべきだった。
だって、俺達は人間だから。義務や命令に従うだけではない、意志を持った人間だから。にも関わらず、俺は──
「どっちが、犬だよ」
見上げた星だけが、全てを刺さんばかりの明るさで輝いていた。
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紫清(プロフ) - 桐箪笥さん» なんですかねそれ尊すぎやしませんか？？ そしてそれを桐箪笥さんが書いてくれる、と……（控えろ） (2020年1月1日 0時) (
レス) id: 840643cfcd (このIDを非表示/違反報告)
桐箪笥(プロフ) - 紫清さん» なんだかその後に早朝、神社などに思った訪れて御籤を引いてみんなで甘酒でも呑むのかな…と想像してしまいました。ごめんなさい、つい…想像が止まらない… (2019年12月31日 23時) (レス) id: c5094549cd (このIDを非表示/違反報告)
紫清(プロフ) - 桐箪笥さん» グレイくんはそういう所Z要領良さそうだなと思いまして笑 私も、彼らの幸せそうな姿が書けて楽しかったです！ (2019年12月31日 22時) (レス) id: 840643cfcd (このIDを非表示/違反報告)
紫清(プロフ) - くろせさん» ありがとうございます！ 昇華隊の野郎共はいいですよね！！（負けじと大声） (2019年12月31日 22時) (レス) id: 840643cfcd (このIDを非表示/違反報告)
桐箪笥(プロフ) - グレイ…とことんやるだけやって責任放棄ですか、そうですか← 幸せそうなみんなが見れて感無量です！ (2019年12月31日 22時) (レス) id: c5094549cd (このIDを非表示/違反報告)
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