そもそも翼など ページ27
『不採用』
真っ白な紙に書かれた、無慈悲な文字。人の運命を淡白に決定する、無機質な文字。
「知ってた」
自室のソファに寝そべって紙を見上げるヴァイスは、ぽつりと呟いた。
記念すべき、20歳の統一テスト。通算で4度目になるその文字列には、正直な話、もう慣れたものであった。人とは慣れる生き物である。初めてこの言葉を受け取ったときはこの世から消えたいという衝動を覚えたものだが、今となってはこうして寝そべっていられるほどに落ち着いている。
それは幸か不幸か。哲学なり精神学なりの才人ならするりと答えを出せるのであろうが、「凡人」であるヴァイスには皆目見当もつかなかった。
あるのは鈍い痛みと、後悔と、諦念と──
今回の論文はハナからダメだったしな。
言い訳。自ずと込み上げてきた最後の思考は、さすがに良くないと首を振って霧散させた。
仕方ねえ、と紙を封筒に戻し、勢いをつけて立ち上がる。そのまま洗面台に向かい、その鏡に映るのは、悲しいくらい変わり映えのしない顔。この4年間で、少しの落胆も表情に反映されないほど、素知らぬ振りが上手くなったらしい。
それが誇らしいような、切ないような。
冷たい水で顔を洗えば、次に映るのはいつも通りの軽薄そうな笑み。取っ付きやすく。見下されやすく。真摯さは態度で示せ。そうして、完璧に作り上げた自分の表情。
そしてハンガーにかけてある、昇華隊の制服を着れば──昇華隊の何でも屋、ヴァイス・スフォルツの完成であった。
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紫清(プロフ) - 桐箪笥さん» なんですかねそれ尊すぎやしませんか?? そしてそれを桐箪笥さんが書いてくれる、と……(控えろ) (2020年1月1日 0時) (レス) id: 840643cfcd (このIDを非表示/違反報告)
桐箪笥(プロフ) - 紫清さん» なんだかその後に早朝、神社などに思った訪れて御籤を引いてみんなで甘酒でも呑むのかな…と想像してしまいました。ごめんなさい、つい…想像が止まらない… (2019年12月31日 23時) (レス) id: c5094549cd (このIDを非表示/違反報告)
紫清(プロフ) - 桐箪笥さん» グレイくんはそういう所Z要領良さそうだなと思いまして笑 私も、彼らの幸せそうな姿が書けて楽しかったです! (2019年12月31日 22時) (レス) id: 840643cfcd (このIDを非表示/違反報告)
紫清(プロフ) - くろせさん» ありがとうございます! 昇華隊の野郎共はいいですよね!!(負けじと大声) (2019年12月31日 22時) (レス) id: 840643cfcd (このIDを非表示/違反報告)
桐箪笥(プロフ) - グレイ…とことんやるだけやって責任放棄ですか、そうですか← 幸せそうなみんなが見れて感無量です! (2019年12月31日 22時) (レス) id: c5094549cd (このIDを非表示/違反報告)
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