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「──じゃあ、着いてきてくれるか?」
「はい」
存外素直に少年は頷く。妹の方は嫌がるように首を振ったが、それも器用に宥めすかす。
本来なら手錠を付けるなり、最低でも手を握っておくなりすべきだっただろう。しかし、そんな気は何故か起こらなかった。そもそも、少年の手は既に埋まっているのだし。
代わりに、と、ヴァイスは彼らの隣を歩いた。
「どうやって来たんだ、ここまで。お前らの家からは遠いだろ」
「ああ、それは。俺、一応どこがどこと繋がってるかは知ってますし、人通りの差とかも分かるので。あと走ってる途中に人々の流れを見ながら、ここなら戦闘は少ないだろうなって予想して」
その回答に、ヴァイスはぎょっとする。ここは黒社会の街らしく込み入った場所であり、今彼らがいるのは、外部からは行きやすいが内部から辿り着くには困難な外れの方。最近まで教育場にいた少年が道を覚えている──それも、人の流れを見てここを最適解と割り出しながら。両親が殺害されて時間もなく──とりあえず、一般人がやっていいレベルのデータ処理ではない。
「そんな難しいことじゃないですよ。教育場ではもっといろいろしてましたし」
悲壮感をだして弟達を心配させないようにするためか、声を明るくして少年は続ける。
いや、難しいことだよ……言葉を失ったヴァイスは、困ったように笑いながら隣を歩き続けた。


やがて陣営につくと、三人はバラバラに分けられ、それぞれ身元の照会が始まる。やがて陣営につくと、三人はバラバラに分けられ、それぞれ身元の照会が始まる。
しばらくすると、一足先に終わったのか、少年がヴァイスの元へ黙ってやって来た。
「な、大丈夫そうだろ。この後も、兄弟一緒に入れるよう頑張るから、まあ心配せずに構えとけ」
「はい、ありがとうございます」
返ってきた言葉は、心なしか固い。視線だけ彼の方へやると、表情が凍りついていた。

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紫清(プロフ) - 桐箪笥さん» なんですかねそれ尊すぎやしませんか?? そしてそれを桐箪笥さんが書いてくれる、と……(控えろ) (2020年1月1日 0時) (レス) id: 840643cfcd (このIDを非表示/違反報告)
桐箪笥(プロフ) - 紫清さん» なんだかその後に早朝、神社などに思った訪れて御籤を引いてみんなで甘酒でも呑むのかな…と想像してしまいました。ごめんなさい、つい…想像が止まらない… (2019年12月31日 23時) (レス) id: c5094549cd (このIDを非表示/違反報告)
紫清(プロフ) - 桐箪笥さん» グレイくんはそういう所Z要領良さそうだなと思いまして笑 私も、彼らの幸せそうな姿が書けて楽しかったです! (2019年12月31日 22時) (レス) id: 840643cfcd (このIDを非表示/違反報告)
紫清(プロフ) - くろせさん» ありがとうございます! 昇華隊の野郎共はいいですよね!!(負けじと大声) (2019年12月31日 22時) (レス) id: 840643cfcd (このIDを非表示/違反報告)
桐箪笥(プロフ) - グレイ…とことんやるだけやって責任放棄ですか、そうですか← 幸せそうなみんなが見れて感無量です! (2019年12月31日 22時) (レス) id: c5094549cd (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:紫清 | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2019年5月14日 23時

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