己の役柄【キャラまとめ】 (ページ3)

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【過去続き】
錦川家は、伝統を大切にするこの時勢でも異常なほどに封建的な家庭だった。
男は泣いてはいけない。女のようなことはしてはいけない。武道を修めなければ。学業でも何でも、やる以上は全て一番になれ。
父から「彼」への指導は厳しいものだった。深夜まで勉強しようと、満点でなければ叩かれた。手にまめができ、破れ、でき、破れを繰り返しても、優勝でなければ蹴り飛ばされた。口答えすれば殴られたし、黙っていても物を投げられた。「しつけ」が始まると、母はじっと黙ってこちらを見るだけ。それでも「彼」は踏ん張った。だって、自分は男だから。
生活が変わったのは、父の不倫相手に息子が生まれてから。もともと向こうに顔を出しがちではあったが、ぱたりとこの家に来なくなった。「彼」の名を呼ばなくなったし、テストも表彰状も見なくなった。殴ることもなくなったが、視界に「彼」を入れることもなくなった。
そのころ、「彼」にはたくさんの身体と心の変化が起き始めていた。おかしいおかしいおかしい。俺は男なのに。みんなどんどん身長が伸びていっているのに、俺は何も変わらない。みんな声が変わっているのに、俺はずっと甲高いまま。俺は、もしかしたら――そんなはずは！だって、そうだったら、自分は今まで、何のために頑張って――？
ある日学校から帰ってくると、母が大きな荷物を持ってタクシーに乗り込もうとしていた。
「……母さん？」
彼は呼びかける。母は、黙って首を振った。その後を予測した「彼」は待って、行かないでと母に追いすがる。
一度、母は悲し気に「彼」を見た。そして、「彼」の頬に触れて、言った。「ごめんね。こんな母さんを許して。……最後に、ひとつだけ教えてあげるから」
先が読めた彼は、いらない、やめてと声を張り上げる。
でも、きこえた。
「あなたはね、女の子なのよ」
それは、受検を控えた中学三年生の、誕生日のことだった。「烈」の字が胸に浮かび上がったのも、その日のことだった。
その後間もなく父親からの支援がなくなり、生活に困るようになる。高校への進学も不可能になったため、言霊を活かしてランガーズに入隊。生活費と将来の学費を防ぐため、今日も働く。

【一人称/二人称】
あたし
平常：アナタ、君、さん
本性：お前、てめぇ、呼び捨て

本当は女の子のことは「ちゃん」で呼びたい。