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けれど、その痛みはやってこなかった。
痛みの代わりに凄い音がして目を開けると、ハリセンを持ったオレンジ色の男の人と、気を失って私によりかかる剣持くんがいる。
「駄目じゃないっすかとーやさん!やっぱり様子見に来て正解だったっすねぇ」
すとんと床に座るオレンジ色の人。
『あ、あの…?』
「あぁ、初めましてなんだねぇ。おれは伏見ガクっす!とやさんの相方やらせてもらってるぜ!」
『矢吹Aです…』
オレンジ色の人は伏見ガクさんというらしい。
気になることは色々あるけど
『伏見さん、も狼なんですか?』
「へ?」
ぴょこぴょこした頭の上の耳らしきもの、ふわふわの尻尾が、気になりすぎる…!
狼男って私が知らないだけでいっぱいいたの?
伏見さんは凄い声音で笑ったあと答えてくれた。
笑い声ちょっと怖い……
「違うっすよ、おれは今は人間っすね」
『今は?』
「あー、いやまぁ、それは置いといてもらって。俺も原因はよくわかんないんすけど、とやさんは気ぃ抜いたり眠くなったりで狼化が上手くコントロール出来なくなっちゃうみたいなんすよねぇ。
で、さっきのことについてなんすけど」
恐らく、というか間違いなく先程の剣持くんの行動だろう。
自分の身に起こりそうだったことを思い出し、恥ずかしさを覚えつつも、伏見さんが止めてくれたことに安堵した。
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作者名:つぶ貝 | 作成日時:2023年9月6日 21時