かわいい (ページ8)

今日:21 hit、昨日:5 hit、合計:67,610 hit

８ページ8

「夜にコンビニ前で駄弁って、悪化するに決まってるじゃん。何で断ってくれなかったのさ」

K「…行きたかった、から。ごめん。誘われて嬉しくて。
結局こーやって迷惑かける羽目になるなんて、考えてなくて」

軽く笑った北山さんが、バカだよなぁ〜と呟いた。

K「20も超えたやつが、食べ物に吊られるなんてね」

ごめん、ちょっと食欲なくて…と、お粥の器を返される。

「食べ物なの。吊られたの」

K「…え？」

「俺じゃなくて？」

北山さんのクリクリの目が、もっと大きく開いた。

いや、俺、なんちゅーこと言ってんだ…。

と焦る間に、北山さんも俺の顔から目線をサッと外した。

はー…さすがに自惚れた。ぜってー引いてるじゃん…！

ちょっと家で俺の話してくれてたからって、調子に乗りすぎた。バカだ。友達少ないから、距離感分からなくてバカになってる。

「お、おかゆ…ラップして、冷蔵庫入れとく。
また、食べてよ」

とにかくこの空気から一旦逃げて、何も無かったかのように帰ってこよう。それがいい。

この変な空気を変える一言となる、部屋を入る第一声は何がいいだろうか。明るい方が…。

「え？」

腕を掴まれた感覚がして、振り返る。

もちろん…北山さんが掴んでいる。

「ちょ…っ、」

そのまま俺の体へ、くらりと北山さんの体が傾いた。

「なにして…」

K「ごめん、急に立ったから、ふらついた…へへ」

支えて、ベッドへ座らせる。なんだこの状況は。

なぜ、無理をしてまで、俺の腕を掴んできたんだ。

どこに目線をやったら良いかキョロキョロしながら立ちすくんでいると、座った北山さんが見上げてきた。

いつもより下からだ。かわいい…

潤んでいる目がさらに小動物感を増させているし、髪をセットしていないからオフ感も堪らなく可愛い。

って…俺、いま何を考えてた？

ふわっと北山さんが笑う。

K「食べ物じゃない、太輔くんと喋りたかったんだよ」

そんなことを言われる。

え、それを言うために腕掴んだの？やっぱり可愛い。

「………」

この可愛いって感情はなんだ？

いや、別に、男が男に可愛いと思うことだってあるだろう。

そんな変なことじゃない。うん。

K「最近、太輔くんと話してる時間が楽しかったから…正直、減っちゃったの寂しくてさ。
ごめんね、結局看病させる羽目なんかになっちゃっ…？！」

そんな変なことじゃない、はずだったのに。

気が付けば、身を屈めて北山さんの熱い唇にキスしていた。