かわいい (ページ6)

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ウチのスーパーは、0時まで営業している。

北山さんのお母さんは、閉店以降も残って閉店作業をして帰る。

多分、家に帰るのは1時を過ぎる。

「あの、北山さん」

結局退勤時間になっても、返信が来なかった。

帰り際、北山さんのお母さんに声をかける。

「どうしたの？」

「えっとー…宏光さんに連絡しても、返ってこなくて。
お大事にって伝えておいてください」

「あら…あの子ずっと寝てるのかしら。
朝顔合わせただけで、お昼前からココに居るから、私も全然様子わからなくてねぇ」

そういえば…

自分が男3兄弟で、5人家族であることは話したが、北山さんの家族情報を俺は全く知らないことに気がついた。

「家、誰も居ないんですか？お父さんとか、兄弟とか」

「…あー。宏光は私と2人よ。
一人っ子だし、離婚しててね」

そうだったのか…と、色々話が繋がる。

北山さんがいっぱいバイトに入っているのも、お母さんが長時間働いているのも、そういうことだろうか、と。

「だからあの子見栄っ張りだし、無理するのよー。
私に心配かけちゃダメと思ってね。親からしたら子どもなんて何歳になっても子どもなんだから、頼ればいいのに。
今日も熱あるのに、来ようとしてたし。私が家出る時、全然大丈夫だって言ってたけど、あれも強がってたのかも」

「あぁ……」

ごめんね、なんだかベラベラ喋っちゃって
と謝られる。

心配なのに、側にいられないなんて…きっと嫌だろうな。

そんなことはさっきの言葉だけで十分伝わった。

「あの…、心配、ですよね」

「え？」

「もし、良かったら、覗いてきます。
ご飯とか食べてなかったら食べさせるし」

「いや、でも…」

「あっ、いや！すみません…
家に上がろうなんて失礼ですよね。すみません…」

謝った俺に、お母さんは首を振った。

「ううん。じゃあ、頼んじゃおうかな。
宏光ね、よく藤ヶ谷くんの話してるから、喜ぶわ」

「は、はい！」

寝てたらインターホンで起きないかもしれないから、と。

俺に鍵を渡してくれた。