かわいい (ページ32)

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太輔くんの家へ上がると、部屋はかなり煌びやかに装飾されていた。

「なにこれ。俺が来るって分かってたの？」

F「…違うよ。彼女と付けてた途中でフラれた。
あーなんか使い回しみたいだよね。嫌なら全部取る」

「いや、いい。付けとこう」

小さめのツリーにたくさん付けられた飾りを触る。
…普通、こんなものを放って出て行くだろうか。

彼女さん、きっと楽しみにしていたんだろうなぁということが、痛いほど伝わった。

そこから太輔くんに経緯を話してもらった。

大倉が関わっていたことには…かなり驚いた。

F「普通に彼女と過ごしてたつもりだったんだけどね。こんな日に飛び出されるほどなのに、よく自分で気付かなかったよね。そんなに知らぬ間に、北山さんのことが好きだって態度出てたかなー」

「まあ…普通は同性を好きにならないって考えは別に間違ってないし、気付かなくても…おかしくないんじゃね」

F「恋のキューピットにも感謝だね」

「それ誰のこと？」

F「大倉さん」

「キューピットなんかじゃねーよ。
さすがに勝手に事進めすぎだわ」

冷静を装ってそんな言葉たちを返していたが

当たり前のようにストレートに好きだとか言われて、顔が熱いのが分かる。

まだ外気で冷えたままだった手を頬に当てて冷ました。

そんな俺の様子に気付いた太輔くんが少し笑って、お腹空いたよねと立ち上がる。

家には、チキンやケーキ、シチュー、バケットと、手をつけられていない食べ物がたくさんあった。

F「ピザはギリ宅配前だったんだよ(笑)頼む？」

「そんなに食えるかな？」

F「食べれなかったら、明日食べたらいーじゃん」

「え、あ、あぁうん…そうだね」

まるで普通に明日も一緒にいるかのような言葉が、嬉しくて、恥ずかしくなる。

吃ってしまった俺に太輔くんは、ごめん何か予定あった？と言った。

「ううん…ないよ。
ただ、明日も一緒に、いるんだなあ…って」

F「うん、そう思ってたけど…だめ？」

「や、全然、ダメじゃない」

そっと腰に手を回されて、引き寄せられた。

久々のそんな距離感に、心臓が鳴って、今度は全身が熱くなる。

F「今日、泊まっていくよね？」

「え、あ、」

耳元で言われた、それ以外の意味も含むその言葉に
思わず言葉が詰まる。

F「だめ？」

「や、ダメじゃない。いい、よ…」

F「やった〜」

太輔くんは腰から手を取って、嬉しそうにそう言った。

俺はこのギャップに…弱い。