かわいい (ページ31)

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キラキラとした部屋に、1人ポツンと座り

考えても考えてもわからないこと、たくさん考える。

そんな時にスマホが鳴った。

連絡先を持っていないはずの、大倉さんの名前が表示される。

O『宏光が寝てる間に、スマホ借りて勝手に追加した！』

O『今日、宏光バイト終わったら俺の家来る予定やねん。その予定譲ったるから、待ち伏せでもし！』

「…は？」

この人は何勝手に連絡先を追加した上に、何勝手なことを言っているんだ。

『意味がわかんないんですけど』

O『彼女と何か予定あるんか知らんけどさ
適当に言い訳でもして、宏光の所行けって』

…その彼女はもう、俺の元には居ない。

彼女にもあんなことを言われて、知り合いでもない大倉さんにここまで押されて。

それでもなぜ俺は…何に悩んで迷って
この部屋に1人で座っているのだろう。

ただただ、自分の気持ちに正直になれば…

北山さんに、会いたい。すごく会いたい。

またあんな楽しくて、幸せな日々を過ごしたい。

いっぱい話したい、笑顔をいっぱい見たい。

…そうか。

この想いが何かなんて、全然難しくない。

こんなの、恋心以外の何物でもないのに。
何でずっと、気付かなかったんだろう。

北山さんの、可愛い顔が見たい。

俺だけが見たい、俺がそうしてあげたい。

しかし…俺にそんな資格はあるのだろうか。

『でも、北山さんのこと沢山傷つけました。
北山さんは俺のこと好きじゃないと思います』

O『男のくせに弱気やなあ。
相手がどうとかじゃなくて、好きって想い伝えたいとか思わんの？』

北山さんはきっと勘違いしているだろう。

自分でもこの想いに気付けなかったのに、北山さんが気付いているわけがない。

伝えたい。知って欲しい。

本気で好きなんだよって、目を見て、顔を見て言いたい。

『ありがとうございます』

俺は上着を着て、家を飛び出した。

マフラーをつけるのは忘れた。
北山さんは今日、ちゃんと付けているだろうか。

別に急がなくたって間に合うけれど、ダッシュで自転車を漕いだ。

待っていたかったから。北山さんのこと。

19時過ぎ、電話をかけた。

その後はまるで、運命の再会を果たしたような気分だった。