かわいい (ページ29)

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K「フラれたから遊べるなーって…？俺以外に相手見つかんなかったの？」

「ばか。違う」

今日は、北山さんはちゃんとマフラーをつけていた。

小さな顔が埋もれかけている。

「ずっと遊びじゃなかった。そのことに自分で気付けてなかったんだ。
北山さんとの時間が何よりも楽しくて、幸せで、何しても可愛いって思って。もっと一緒に過ごしたい、自分だけがその顔を見たいって、そこまで思ってたのに」

北山さんの丸い目が潤んでいく。

ぱちっと瞬きをすると、一粒雫が落ちた。

「自分は男を好きにならないだろうとか、彼女がいるんだからとか、そんなことで違うって…勝手に決めつけちゃって。でも、女とか男とか、誰のこと好きだったとか、そんなの全然関係なくって。
ただ…ただただ俺は、北山さんが…好き」

北山さんの埋もれかけていた顔が、ぱっと上がる。

信じられないと言うかのように目を大きく開いていて、そこから次々に涙が溢れた。

肩を震わせ、溢れる涙を一生懸命に片手で拭く。

俺はその手を、握って止めた。

K「いつから待ってたんだよ…手、冷てーじゃんっ」

「これからも待つよ。だから許してくれたら…」

K「待たなくていい…っ！！今すぐ許すから」

ゴトンと大きな音が響いた。北山さんの持っていた缶の入った袋が床に落ちたのだ。

俺は、北山さんの両腕にぎゅっと包まれた。

もう、間違えたりしない。
傷つけたりしない。離したりしない。

そんな思いで、強く抱きしめ返した。

「北山さん、好きだよ」

そう言うと、北山さんが俺の胸に埋めていた顔を出して、俺を見上げる。

きらきらと、今までで一番可愛い笑顔を見せた。

K「俺も好き」

可愛い笑顔を手で包むと

そこから、どちらともなく唇を近づけた…

と、そのタイミングで北山さんの電話が鳴る。

K「…あっ！！おーくら！！！」

顔が間近のままそう叫ばれると、勢いよく体を離され、北山さんは電話に出た。

K「大倉ごめん！今さ…」

慌てて話す北山さんの耳元からスマホを奪った。

「大倉さん、ありがとうございました」

ちょっと！と焦る北山さんにも聞こえるように、電話をスピーカーへと変える。

O『おーそれは成功ってことやな？』

K「ちょ、どういうこと？」

O『あー宏光、ごめんなぁ…俺腹痛くて！めっちゃ痛くて！今日中止！やから太輔くんと楽しんで〜』

プツッと電話が切れる。

俺は床に落ちた袋を拾って持ち上げた。

「俺の家、帰ろうか」