かわいい (ページ26)

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「宏光、最近飲みに行きすぎじゃない？」

昨晩は大倉の家で朝まで飲んでおり、二日酔いで最悪な目覚め。起きたくない気持ちは山々だったが、夕方からアルバイトだ。

「んーそうかー？」

「若いから大丈夫って思ってちゃダメよ」

「ハイハイ」

母親の言葉を流し聞き、気持ち悪さで何も食べる気にならなかったから、冷たい水だけ飲む。

最近ちゃんと食べてるの？という言葉もまた流した。

1人でいるといらないこと考えるし、思い出してしまう。

だから、最近は今までよりもコンスタントに飲みに出掛けていた。人と話していれば、楽しくて誤魔化される。嫌なこともあまり思い出さないから。

…今日もアルバイトが終わったら、誰かに会おうかな。

そういえば昨日飲んでいる時に、大倉は明日何もないとか言っていた気がする。泊まりに行ってもいいだろうか…。

そう思ってしまえばすぐにスマホを開いて、大倉へ今日も行っていいかとメッセージを送るためアプリを開く。

そこで気が付いた。太輔くんとのトークがスクロールしないと見えないくらいまで古くなって、下に下がっていた。

シフトをいつ出すのか聞かれることも今はない。

辛いから、離れよう、忘れようとして距離を取ったのは俺の方なのに。

結局辛い。

「おはよーございまーす」

出勤して、着替えていると店長に話しかけられる。

「北山くん、クリスマス何もないの？」

「ないっすけど。シフト出してましたよね？」

「あ、うん出てた出てた。いやークリスマスって主婦も学生も関係なく休み希望多いからさ、助かるよ！ありがとうね。まぁ、どっちか１日にしとくよ」

「あぁ…はい」

ポンっと俺の肩を叩いて店長が部屋を出て行った。

感謝されたのに、なんだか嫌味を言われた気分だ。別に気遣って1日にしてくれなくてもいいし。

店長のデスクに、置かれたままになっている完成途中のシフト表を、歩み寄って覗いてしまう。

太輔くんは、24日も25日も休み希望だった。

そりゃそうだよな…彼女いるもん。当たり前だ。

F「おはよ」

「…っ！あ、お、はよ」

デスクの前に俯いて突っ立っていると、声が聞こえて驚いた。今俺の頭の中を埋める張本人だった。

そんな俺の様子を見て、太輔くんは不思議そうな顔をしたが、すぐ目線を外し着替え出す。

服を脱いでいるのが視界に入らないように、部屋を出る。

何も、思い出したくないから。