かわいい (ページ25)

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その場を離れようとするから、腕を握って慌てて止める。

「もしかして…気にしちゃった？」

K「……はい？」

「ほら、あの時彼女にさ色々言っちゃったから…」

彼女を落ち着かせるために、男同士のことを否定するような言葉をたくさん言ってしまった。

それは、北山さんの恋愛観も全て否定することになってしまったと思う。

もちろん、この関係を築いた以上は否定する気持ちなんてない。しかし、あの時は怪しまれないためにそういう風にいうしかなかったのだ。

北山さんはしばらく黙っていたが
ニコッと笑って俺の手を外した。

K「全然気にしてないよ。太輔くんこそ、俺のこと気にしないで」

「そ、そっか。よかった」

北山さんは少し帽子を被り直すと、仕事を再開した。

そこから、今までのように何度か話かけたけれど…北山さんは、いつも通りのようで、やっぱり全然いつも通りじゃなかった。

無視されるとかではないけれど、ただ俺が一方的に話しているだけというか…。それに、その後すぐレジに入られてしまって全然話せなかった。

退勤すると、北山さんがそそくさと帰ろうとするから慌てて止める。一緒に帰ろうと言うと拒否はされなくて安堵したが…。

やっぱり、北山さんは俺の話に相槌を打つだけ。楽しい帰り道には…ならなかった。

その空気から、コンビニに行こうと誘う勇気は出なかったが、家に着いてからゲームしようとメッセージは送ってみた。しかし、ついに断られた。

気にしてないって言ったのに。

友達でいーじゃんって言ってたのに。

これじゃ今まで通りどころか、今まで以下だ。

そんな北山さんの様子に、俺もずっとメンタルが持つわけでもない。だって元々、人間関係築くのも人に話しかけるのも得意じゃないんだから。

そうして段々、バイト中話しかけなくなっていき、ついに挨拶程度だけの仲になった。北山さんから話しかけてくれることはもちろんなく、一緒に帰ることもしなくなった。

北山さんのSNSを覗くと、色んな友達と遊んでいて寂しくなる。

結局、居なくなられて日常が変わったのは俺だけだった。

もう、話しかけても俺に可愛い笑顔は見せてくれないと十分知らしめられた。

「クリスマス何しようか？」

「1日は家でパーティして、もう1日はイルミネーション行きたいな！」

いつまでも引きずっちゃダメだ。俺も元に戻る努力をしようと、時間が経ってやっと思えた。

彼女を大切にして、今まで通りの普通の生活を送ればいいだけ。