かわいい (ページ23)

今日:11 hit、昨日:5 hit、合計:67,600 hit

２３ページ23

びしょびしょの髪型で、外を走った。

色んな人に見られた。でもそんなこと気にならなかった。

O「どうしたんや突然」

気付けば大倉の家のインターホンを押していた。運良く家に居て、急に行くことなんて普段ないから、俺だとわかるとすぐ開けてくれた。

外の冷たい風で濡れた髪の毛はすっかり乾いたが、明らか様子がおかしいと気付いてくれたようだった。

「まあ…色々。はっくしゅ！！」

O「あーあー外寒かったやろ」

「…おーくら、とりあえず服貸して欲しい」

冷たい風で濡れた服は乾かなかった。ひんやりして寒い。これじゃまた風邪を引く。

O「え？外、雨降ってた？」

俺が脱いだ服を預かった大倉が、触りながらそう言う。

「…降ってない」

O「いや、首元濡れてない？」

「まぁ、」

多分でかいけどとパーカーを渡された。上から被ってスポッと頭を出すと、目の前に大倉がしゃがんでいた。

O「来たんやったら、何あったかくらい話してーや。
気になるやろ」

太輔くんか？と首を傾げられる。俺は、うんともううんとも言わない。

O「なんか髪の毛ぐしゃぐしゃやし、泣いたような目してるし、あれ…よー見たら頬腫れてない？」

「…俺、そんな酷い見た目してんだな」

とりあえず笑うしかなくて笑ったけど、大倉はそんな俺を見て笑わなかった。

優しいなって思う。太輔くんとは違う優しさ。

叶うとか叶わないとか抜きに、大倉のことを好きになれたら、こんな想いはしなかったんじゃないかと思う。

O「だからやめとけーゆーたのにな」

「ほんと、そうだよね」

O「あほやな」

「…うん、あほだよね」

O「あほすぎて泣けてくるんちゃう？」

泣いていいよって遠回しに言われてると感じて、一気に我慢してたものが溢れ出した。

大倉が横にそっと座ってくれたから、とにかく無茶苦茶に話した。

起きたら怒鳴られて、水掛けられて、叩かれて、投げられて、気持ち悪いって言われて

好きじゃない…って、言われたって。

全部、うんうんってとにかく聞いてくれた。

「最低なことをしているのはお互いなのに、相手のことは好きで堪らない。でも自分のことは大嫌いになった。
…大倉の言うこと、ちゃんと聞くべきだった」

O「そうやな。でも、俺はお前のこと好きやで？」

そこだけ、うんうんって聞くんじゃなくて
わざわざそう言ってくれた。

O「あ！友達としてな？」

「わかってるよ、ばか」

笑わせてくれた。