10 ページ13
暑い。
暑い。
ずっと走り続けていた。
探偵社の前まで走って、倒れこむ。
動き回って痛い心臓や汗で滲みる目。
頭の中はぐちゃぐちゃで、周りの目なんて気にせずに泣き叫びたくなった。
なんで、どうして
敦くんが、あんなこと
太宰さんが、何？
頭が痛い
脚が痛い
こんなことを脳内で繰り返していた。
気がついたら、涙が出ていて
気がついたら、動けなくなっていて
もう何も考えられなくなっていたんだ。
どのくらい時間が経っただろうか、誰かに優しく抱き起こされた。
見ると、太宰さんだった。
「Aちゃん、どうしたの？敦くんは……」
太宰さんは私の顔を見て、今まで見たことが無いような表情をした。
人に助けられたところで、全てを委ねてしまった私はその顔を見ていた。
「ちょっと、とりあえず中に入ろうか。」
部屋に入ってすぐの所にあるソファーに座らされて、目の前に置かれたのは麦茶。
適度なその温度を体に流し込んで、段々考えられるようになってきた。
敦くんは、太宰さんに嫉妬していた。
太宰さんが、私のことを好きだと言ったから。
この、太宰さんが……？
太宰さんは、突然目を見開いた私に驚いていた。
「敦くんと、何があったの。」
でも、すぐに真顔に戻って私に訊いた。
「敦くんが突然怒った、というか、私に問いただしてきたんです。怖くなって、逃げてきてしまいました。」
細かいことは言いたくなかった。
「それは何でだか分かる？」
太宰さんは柔らかい声でまた私に質問する。
「ああ、言いたくないならいいよ。」
ありがとうございます、と小さな声で答えた。
すると、彼はふっと笑った。
「どういたしまして。」
「君には何故か、優しくしたくなるんだよ。」
私の心臓がまた暴れ出した。
今までとは違う雰囲気に緊張しているのか、それとも……。
「今は、ここで休んで。私がついているから。」
太宰さんは目を細めて微笑んだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 28人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
秦弓月(プロフ) - お返事が遅くなりすみません。素敵なお話ありがとうございました。 (2018年12月29日 13時) (
レス) id: deabd34961 (このIDを非表示/違反報告)
猫又 - 遅くなって本当に申し訳ありません！完成しました。 (2018年12月22日 1時) (レス) id: cc1fa790a0 (このIDを非表示/違反報告)
猫又 - あやなさん» 了解しました！なるべく早く投稿できるようにするつもりですが、少し遅れてしまうかもしれません。 (2018年9月15日 22時) (レス) id: f7b9203701 (このIDを非表示/違反報告)
あやな - その後、彼の側に居たいとポトマを出奔し、ボスの側近として敵組織に与してしまいます。彼女の異能力が悪用されることを恐れた首領から連れ戻すよう命じられた中也さんは…という感じです。よろしくお願いします。 (2018年9月14日 21時) (レス) id: deabd34961 (このIDを非表示/違反報告)
あやな - 猫又さん» 中也さんの方の設定が固まりましたので、コメントさせていただきます。全体のコンセプトは「中也さん×裏切り夢主」です。夢主は中也さんの幼なじみの異能力者で、補佐役を務めていました。しかし、ある時敵のボスに恋してしまいます。(続きます) (2018年9月14日 21時) (レス) id: deabd34961 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：猫又オイル | 作成日時：2017年3月14日 21時
