【MASHLE】天使の少年 (ページ9)

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E p i s o d e . 8 ページ9

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『……ただいま、戻りました、』

使用人らに出迎えられることはないまま、僕は家へと足を踏み入れた。……ただいま、なんて、返ってきたこと無いのにね。

『……部屋、もどろ』

疲れたから、レモンティーでも淹れようとキッチンに入る。キッチンにも使用人の一人すらいなくて、僕はいつも通り自分の分だけレモンティーを淹れた。

熱さも冷めないままに飲み干し、乱暴にティーカップをシンクに置く。……夕飯いいや、もう寝よう。

姉にも両親にも会いたくなかったから、早々に部屋に戻ることを決めて、僕はキッチンを出た。

無駄に長い廊下を歩き、角を曲がろうとしたら不意に目の前に壁が現れ、無論、止まれず正面から激突。

ぅわ、と声が漏れ、体が半ば吹っ飛ぶように後ろに尻餅をついた。

「…！おっと、……大丈夫？ごめんね、気付けなかった」

絹のような白い髪に、大きな剣。身長たっか。僕が立っても20cm弱ほどの身長差だ、おまけに転んでる僕からしたら高いなんてもんじゃない。

『だ、いじょうぶ、です、ごめんなさ、』

何でこんなとこにいるんだよこの人…。……どっかで見たことあるような…。

魔法管理局…？そういえば、姉の資料を渋々届けに行ったとき、この人もどこかで。

『しん、かくしゃ、』

そうだ、そう、神覚者の中にいた。名前、名前は──。

「本当に大丈夫？立てそう？」

『──っ、大丈夫、です！ごめんなさい、！』

伸ばされた手を借りることなく立ち上がり、失礼を承知で横を走り過ぎる。姉と、よく一緒にいる人だ、そう、たぶんカルド、カルド・ゲヘナ、だ。

どうしよう、話したことがばれたら、また、姉様に、。

『……ついてないなぁ…！』

今日は心底ついていないらしいや。家にいたのも、きっと姉と仕事か何かあったんだろう。ああやっぱり帰ってくるんじゃなかった。

もう疲れたよ、ほんっとに。

部屋に駆け込むなりベッドに倒れ込み、微睡む意識をすぐに落とした。

せめて、明日はもう少しいい日になりますように───。

▽Noside

Kald「ああ、オーター、少し聞きたいんだけど」

Orter「……何ですか」

夜も更けてきた頃。カルドは通りかかるオーターを呼び止め、少し考え込むように言った。

Kald「魔法局員のアンヘルさんって下兄弟がいたりします？」

Orter「何故私に聞くんですか。……弟がいると話していましたよ、"加護"を持った。」

なるほど、噂の"天使の加護"か。カルドは静かに笑みを深め、オーターは興味がなさげに立ち去った。