【MASHLE】天使の少年 (ページ8)

今日:15 hit、昨日:17 hit、合計:12,605 hit

E p i s o d e . 7 ページ8

・

Wahlberg「ほう…神覚者か。では、何故君は神覚者を目指す？」

校長の目線は厳しい。そりゃそうだ、大体皆神覚者になりたいって言うに決まっているもの。

『……僕は、アンヘル家の出身です』

ただ、僕はなんの意思も持たず、ひたすら地位のために神覚者になりたいなどと言うやつらには、絶対に負けない。

『アンヘル家が、"加護"で有名なのはご存知ですよね。

…今現在の"天使の加護"を持つのは僕です。』

僕は、天使の加護(こんなもの)なくたって。

『幼い頃から、僕は"加護"以外で見られたことがありません。』

"天使の加護"を持つ子、"加護持ち"の子、天使に愛された子、天使の少年。

全て、僕のことを、"加護"としてしか見られない、頭の悪い人間共。

『僕は、"加護"なんて無くたって、神覚者になれます』

僕を僕として見てくれなかった奴らを、

『僕自身を否定し続けた両親を、姉を、周囲の人間を、』

────僕は、天使なんかじゃないって。

『天使なんかに頼らずに神覚者になることで、認めさせて、……いや、

完全否定します。』

今に見ていろ。僕は僕として生きて行くんだ、天使など知ったことか。翼も光輪も、何もいらない。

ひたすらに、あいつらを否定したいんだ。

Wahlberg「……そうか。君は今まで、散々頑張らされて来たのじゃろうな。」

『……。』

Wahlberg「認めさせ、否定した先に、何を求める？」

『─────なに、を、』

言葉につまる。そうだ、確かに、僕は否定して何が欲しい？認めさせたあとは？それで僕の何が満たされる？

失ったものは、もう戻らないのに。無駄に足掻いて何になる。与えられるはずだった家族愛は、欲しかったはずの優しさは、きっと否定した先にはない。

あのとき感じた寂しさも、悔しさも、苦しささえも、報われることなど到底ない。

それでも尚、僕が、あいつらを否定したい理由は？

『……わかりません。…その答えを知るために、やっぱり僕は神覚者になります。』

Wahlberg「……では、今は、それで良い。だがしかしだね、…もう少し周りの音を聞いて、見て、新たな気付きを得ることは大事なことじゃ。……努努(ゆめゆめ)忘れぬようにな。」

思っていたよりも早く、僕は面接から解放された。……やっぱり疲れたな。

あとはもう結果を信じて帰るだけ。日が傾いて来ている。……帰りたくないなあ。