【MASHLE】天使の少年 (ページ2)

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「なに？アンタまさか本当にイーストン受ける気な訳？馬鹿も休み休み言いなさいよ」

ああ、また始まった。
今日も今日とて、姉は僕を視界に入れるのすら不快だとでも言いたげに、睨みつけてはそんなふうに悪態をつく。

僕に"天使の加護"があると分かった日から、ずっとこうだ。

『……関係ないでしょ』

反抗したって無駄だけど、そこを退いてくれなきゃ、編入試験に遅れるのだから仕方ない。

僕とは対照的な黒い髪。姉はまるで何か汚
いものでも見るような顔をするのだ。

さっさと死ねばいいものを、と。姉はきっとそう思っているのだろう。僕が死ねば加護の行先はきっと姉だろうから。

朝から少しも気分が良くない。今日は手まで出されなかったのだからまだマシだが。

息子があの名門イーストンを受けるというのに、見送りにすら、応援にすら来ない両親にはもう諦めた。

天使だなんだと皆僕を持て囃すが、家ではまったく愛されてなどいないのだから笑えるにも程ってものがある。

結局一人でイーストンへ向かう羽目になるのだ。

『…何あれ……やば…』

イーストン魔法学校に着くなり視界に飛び込む変なやつ。ダンベルか何かを使い、試験前だというのに何故か筋トレしてるキノコ頭。

ああいうヤバいのはきっと早々に落とされるんだろうな、と僕は意識を逸らした。

「おい、あれ。アンヘル家じゃね？」

「うっわまじで？やば、めっちゃ可愛い」

「でも今のアンヘル家の"加護持ち"は男って……」

「……えじゃあアイツ男？」

もう慣れた噂話。僕の何がそんなに珍しいのか。確かに少々中性的な容姿の自覚がない訳では無い。ただ、僕は正真正銘男であるというだけで。

「噂の天使の少年……」

「まじで天使みてえ」

「てか二本線じゃん、やば」

「怪我とか治せんでしょ？羨ましー」

ああ本当に居心地が悪い。早く始まればいいのに、と僕はそっと顔を伏せた。

Kroad「今回の編入試験を担当する、クロード・ルッチだ。よろしく」

少しして何だか派手な登場をしたのは試験官らしいクロード・ルッチと名乗る人。周りがざわつくが、少しの噂程度でしか僕は知らないからどうでもいい。

とにかく、僕はイーストン魔法学校に入らなくてはならない。

こうして始まった編入試験。ばらばらに動き回る文字列が書かれた答案用紙に、僕は早速嫌な顔をするのであった。