少しだけ暖かい ページ5
・
『……なんも、弱くないじゃん、』
術式とか、呪術とか、家柄で少し学んだだけで、何にも知らないまま戦場に放り出された。攻撃避けるだけで精一杯だし、なんか痛いし、居すぎだし、怖いし、もう無理だし。
『……もう、だめじゃん、』
祓っても祓っても湧いてくる。そもそも祓えているのかすらわからない。もういいや、潔く死んでやろう、とアスファルトの上に座ってやった。呪霊が飛びかかってくるが、開き直って見据えてやる。もし来世とやらがあるのなら、今度は何も要らないから、普通を生きてみたい。そんな思いと共に瞳を閉じた。
「ははっ、
凄い勢いで吸い込まれて行った呪霊。半目になって見てみれば、ヘンな前髪と、サングラス。消えた呪霊と空気が軽く感じる建物内。
「大丈夫かい?」
「弱ぇな、オマエ」
柔らかく手を伸ばされた。
声が出ない。聞きたいことはたくさんあるのに、目の前の二人は、わたしにわたしとして接してくれているのが嫌という程よくわかって。よくわからない、感情がぐちゃぐちゃ混ざり合って、胸がいっぱいだ。
なんで、どうして助けに来てくれたんだろう。
胸が、いっぱいになって、無性に、暖かかった。
『……ななせ、わたし、』
いつだって、わたしの前を歩いては、手を差し伸べて笑ってくれていた姉と、二人を重ねながら、恐る恐る、わたしは夏油さんの手を掴んだ。
「こんなとこまで
くるくるとわたしの腕に包帯を巻きながら、家入さんはそう言った。伏し目がちなその端正な顔と目が合うことはなく、大人しく顔を背けた。
「
貼られた絆創膏、当てられたガーゼ、香る消毒液の匂い、全てが丁寧で、暖かくて、僅かな煙草の香りが酷く心地よかった。
『……すみません、迷惑かけて』
「……なんで
謝罪には触れず、家入さんは変わらずわたしの手当をしながら言った。問われたその意味があまり理解出来ず、悩みながら口を開く。
『……こうした方が、喜ぶ人…多いかと思って、』
そこではっとする。わたし、今ていうかさっきからずっと、完全に素で話してる。
表情を曇らせたわたしを、家入さんは静かに見守ってくれていた。
704人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
nono(プロフ) - 救済してほしいです!更新待ってます! (10月28日 13時) (レス) @page13 id: 9ef243ee9f (このIDを非表示/違反報告)
カリフラワー - 好きです!!!救済してほしいです!更新を楽しみに生きます!! (10月1日 17時) (レス) @page13 id: f9715fa0cb (このIDを非表示/違反報告)
にゃんこ - 救済してほしい! (9月10日 18時) (レス) @page13 id: 23ef5c5b40 (このIDを非表示/違反報告)
ねこねこさん - 普通ならバーカっていうところをばあかって言ってるの可愛すぎる!更新待ってます! (8月17日 23時) (レス) @page13 id: ecfb4bc453 (このIDを非表示/違反報告)
愛実 - 救済してほしいです…!!めっちゃ好きです更新頑張ってください!!! (8月17日 20時) (レス) @page13 id: e769ed5532 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ