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そうではなくて ページ3






教室を飛び出した五条は、思わず自販機を蹴りつけてしまった。それでも頭はぼやぼやと霧がかかったように晴れず、転入生の彼女のことがやはり頭に残っていた。




教室に入って来たとき、七晴(ななせ)がまだ生きていたんだと、そう錯覚するほどには顔が似過ぎていて、そういや、双子の妹がいるといつも笑って話していたな、なんて。




「っ、くっそ、」




仕草も声色も、確かに似ていて、それでも、七晴(ななせ)がもう居ないのだと、五条は必死に理解しようとしていた。理解しようとしていたからこそ、それを否定されているような気がしてしまったのだった。




あれだけ、先生に言われていたのに。




「双子の妹?誰の、」


「……七晴(ななせ)のに決まっているだろう。」


「は?何で、…」




親絡み。何も言われずとも、権力という腐ったものにまとわりつかれた七晴(ななせ)の妹とやらに同情した。




「つか、呪術使えるんすか、そいつ…」


「……七晴(ななせ)には劣るが多少」


「多少って……」



思い出すのは彼女の亡骸。あの七晴(ななせ)ですら生き残れなかったこの呪術界で、劣った妹が果たしてどれほど持つというのか。



ただでさえ、呪術界での双子は片方に呪力が偏りがちで凶兆だとされているのに。



七晴(ななせ)が亡くなったからな、偏っていた力が妹に移った。ただ実戦経験が極端に少ない。七晴(ななせ)のようには立ち回れないと思っておけ。」



自分にどうしろと言うのか。夜蛾の言葉はいつまでも不完全燃焼だった。



「お前も会ったことがあるだろう。七晴(ななせ)の両親に。」



切り出された新しい話題に、五条は記憶を辿ってみる。



思い出せば、その両親からの必要以上の圧力に、背負いきれないほどの期待に、双子の妹を姉の前で侮辱する軽薄さに、いつも七晴(ななせ)は苦しそうだった。



「まあ、あの通りだ。厳しく当たるなよ、頼れる人間がいなくなったんだ、そう直ぐには立ち直れまい。」



その場では一言、ただ肯定したが、抑えていた感情が、教室に入って来た妹を見た瞬間に溢れてしまった。




「……七晴(ななせ)は、ほんとに、もう居ねぇんだな」




自分にとって、芹谷七晴(ななせ)という人間が、どこまで大きい存在だったかなど、言われなくともわかる。傑も硝子も、あの明るさにどれほど救われていたんだろうか。



頼れる人間が唯一姉だけだったあの子は、一体何を思ったのだろうか。




五条には、わからなかった。

確かに違うんだ→←押し殺した努力



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nono(プロフ) - 救済してほしいです!更新待ってます! (10月28日 13時) (レス) @page13 id: 9ef243ee9f (このIDを非表示/違反報告)
カリフラワー - 好きです!!!救済してほしいです!更新を楽しみに生きます!! (10月1日 17時) (レス) @page13 id: f9715fa0cb (このIDを非表示/違反報告)
にゃんこ - 救済してほしい! (9月10日 18時) (レス) @page13 id: 23ef5c5b40 (このIDを非表示/違反報告)
ねこねこさん - 普通ならバーカっていうところをばあかって言ってるの可愛すぎる!更新待ってます! (8月17日 23時) (レス) @page13 id: ecfb4bc453 (このIDを非表示/違反報告)
愛実 - 救済してほしいです…!!めっちゃ好きです更新頑張ってください!!! (8月17日 20時) (レス) @page13 id: e769ed5532 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:はく | 作者ホームページ:無いっス。  
作成日時:2023年8月13日 12時

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