【呪術廻戦】姉じゃなくてすみません

押し殺した努力 ページ2

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『一般校から転入してきました、芹谷(せりがや)Aです、よろしくお願いします』




姉らしく、姉らしく。姉ならこうしていた、姉ならこう言っていた、姉ならこう振舞っていた。姉なら、姉、なら。




頑張って、みんなの、姉のかわりに。




わたしと違って、たくさんの人に愛された姉のように、しなければ。




「なに、オマエ。七晴(ななせ)の真似みてえなことして。今すぐやめろよそれ、気色悪ィ」







わたしが頑張ったことはどうしたって、誰にも届きやしないんだ。








「すまないね、悟が。私は夏油傑、よろしくね、芹谷さん」



姉のことも、この人は本当に、芹谷さんと、そう呼んでいたのだろうか。




さっき散々言って教室を出ていってしまったあの人は、呪術界隈では名前をよく聞く五条悟さんと言うらしい。





「……家入硝子。よろしく」




煙草をくわえて、わたしとは目も合わせずに、窓際の女の人は言った。


このひとも、姉相手にこうして無表情な時があったのだろうか。無機質な声で、感情を持ち合わせずに話しただろうか。



いいや、きっと、皆元々そうではない。




否定されるのも、他人行儀なのも、興味すら持たれないのも、




ひたすらに、わたしが、姉ではないからなのだ。



『(ああほんと、……何にもなくて、苦しいや)』




本音は奥底まで押し込んだまま。わたしがわたしで居ようものなら、それこそ、姉の真似事をしていた方がまだ居場所があるから。




教室にある元々は姉のものだったその席に座るのは、何だか無性に苦しくて。一つ隣の、一番端っこの席に着いた。




『(わたしは、わたしでいてはいけないから)』




いつか、わたし自身を見てくれる人が、なんて淡い期待は、既に星屑の彼方へと葬り去ってしまった。





わたしには、何も無かった。









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