新しい家族 ページ5
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「いつまでそうしているつもりだ、夏目。」
「あっ!えっとニャンコ先生……」
どのくらいの時間が立っただろうか。
すすり泣く彼女を慰めて、泣き止むのを静かに待っているうちに日は傾いて妖達は帰っていった。
先生の言葉に今の状況を改まってみるとそれはそれは恥ずかしくて俺はボムッと頭から蒸気を吹き、顔を真っ赤に染めた。
「あ、あの!ごめんA!」
それからAちゃんから急いで離れた。
Aちゃんの顔も真っ赤で、その上まだ瞳が潤んでいてどうしようもなく可愛かった。
『いえ、こちらこそ…そのニャンコ…先生…?は?』
「先生は自称高貴な大妖で俺の用心棒。
一応この家は先生が結界を張ってくれてる…はず」
"それにしてはよく妖が勝手に入ってくるけどな"と、嫌味を込めて先生をじろりと見た。
「ふむ。お前も先生と呼べ。気が向いたら助けてやらんこともない」
…が、先生はそんなことお構い無しだ。
『は、はい!ニャンコ先生』
「ニャンコ先生が喋れることは塔子さんたちには秘密だ。」
『わかりました。』
「俺達が見える事も秘密だ」
『やっぱり…嫌われるからですか?』
Aが少し俯いて静かにきいた。
「塔子さん達はきっとそんなことで俺達を嫌いになったりしない。
でも、笑えなくなるだろう?
優しい人達だから、心配して笑えなくなる。
それが嫌なんだ。」
『……そっか、そうですね!わかりました!』
口下手な俺の言い分を理解してくれたようでほっとした。
「でも、俺が見えることを知っていて相談にのってくれる友人は何人かいるから、Aにも紹介するよ。
俺なんかよりずっと頼りになる」
「名取の小僧か」
「うん、名取さんはあれで頼れる人だからね。
あと田沼やたきも力になってくれる。」
『名取さん?…田沼さん?たきさん?』
「ああ、明日一緒に帰るからその時紹介するよ」
その日の夜中、俺は向かいの部屋で誰かと談笑する彼女の声を聞いた。
子守歌のようなその声は確かに“貴志くん”とか“ニャンコ先生”だとか言っていて、今日のことを話しているようだった。
それを聞いて俺は嬉しくなって、そしてその声に誘われるままいつの間にか眠っていた。
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作者名:藤咲 | 作成日時:2018年8月16日 2時