○60 ページ10
.
どのくらい時間が経っただろうか。
.
看護師さんに無理やり押さえつけられて、やっと冷静さを取り戻した頃、確か、ここに案内してもらって。
手術中のランプが消えるのをただ何も考えずに待っていた気がする。
手に持っていたはずのいちごミルクは、二つとも手の中にはなかった。
椅子の上に転がったいちごミルクをふたたび手に取ったら、買った直後のひんやりした感じは残っていなかった。
パチ、と、ランプの消える音がして、中から先生らしき人が出てきた。
「望くんの家族は来ていませんか?」
「のんちゃんはっ、どうなったんですか!?」
のんちゃんのお姉さんや家族の人よりも、まずのんちゃんが気になって、質問を無視して先生に尋ねた。
「のんちゃんは、生きてますよねっ!?」
お願いだから、イエスと言って欲しかった。
.
「のんちゃんは…、」
先生は何も言わずに、首だけを動かした。
横に。
それは、私の知りたくない現実を、はっきりと伝えて。
それでもまだ、理解は追いつかず、私の質問に対してのイエスを求めた。
「違う!のんちゃんは生きてる!いなくなってなんかないよっ!」
「落ち着いて。私たちも最善を尽くしました。望くんも、よく頑張ったと思います」
「やめて!のんちゃんは死んでなんかない!ねぇ、まだ中にいるんでしょ?生きてるんでしょ?」
先生は、それ以上何も言わなかった。
ただ、私を冷たい目で見て、一つ礼をしてどこかへ行ってしまった。
.
.
それからは、あまり覚えていない。
どうやって歩いて、どうやって帰って来たのか。
涙は出てこなかった。
気持ちが、まだ否定をやめなかった。
でも、考えれば考えるほどに現実は浮かんできてしまうから、目を閉じて、耳を塞いで、受け入れないようにした。
そして、次の日は学校を休んだ。
.
180人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
えぇふぇす(プロフ) - ちぃさん» ありがとうございます。まだそんなにお話は書いていませんし、私の代表作は今のところこれです笑笑。今年はあまり更新できそうにないですけど、どうにか頑張ろうと思います!ご愛読ありがとうございました。 (2018年6月21日 22時) (レス) id: 298ecf02a2 (このIDを非表示/違反報告)
ちぃ(プロフ) - 2日かけて一気に読ませていただきました。後半は涙が止まりませんでした。夢小説で涙を流したのは初めてだったので、自分でもびっくりしています(笑)時間がある時に他の作品も読んでみます! (2018年6月19日 1時) (レス) id: 43edfcd303 (このIDを非表示/違反報告)
えぇふぇす(プロフ) - 虹色ジャスミン????????さん» ご愛読ありがとうございました!感動してくださって、本当に嬉しいです!ぜひほかの作品も、よろしくお願いします! (2018年5月6日 20時) (レス) id: 298ecf02a2 (このIDを非表示/違反報告)
虹色ジャスミン????????(プロフ) - 泣かないで笑って?読ませていただきました!すごく感動して、涙が止まりませんでした!また、機会があれば書いてくれると嬉しいです! (2018年5月6日 10時) (レス) id: e174304866 (このIDを非表示/違反報告)
えぇふぇす(プロフ) - 369さん» 私なんかの作品に涙してくれるとは、本当にありがたいです!病系については他のお話は考えてないのですが、機会がありましたら書かせていただきます!他の作品もよろしくお願いします! (2018年5月4日 20時) (レス) id: 298ecf02a2 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:えぇふぇす | 作成日時:2018年4月2日 22時