検索窓
今日:5 hit、昨日:6 hit、合計:19,988 hit

[23] ページ23

.




「Aちゃん」

私の前から、優しい声が聞こえて。

ぱっとその人の顔を見たら、彼は複雑そうに笑った。

「はま、ちゃん」

「覚えとってくれたんやな」

止まることを知らない涙、はまちゃんは、私の涙を拭ってくれた。

「のんちゃんと、約束しとったことがあって、」

「約束…?」

ついてきて、と目線で言ったはまちゃんに、一口しか飲んでへんブラックコーヒーを持って、立ち上がった。



向かった先は、屋上やった。

「いつもな、ここで練習しとってん。俺とテレビ電話繋いで、くだらんこと話しながら」

望と練習したことが、頭の中を駆け巡る。

あーあ、ほんまに好きやったんやなぁ。

「完成した時、動画を撮ってん。保険や、ってのんちゃんが」

そう。

ほんまやったら生で聴くはずやった。

「まさかほんまにその保険を使うなんて、思っとらんかったし、使いたくなかってんけど」

小さなスマホの画面に映る、望の姿。

その真ん中には、再生を表す三角のマークがある。

「しっかり聴いたって。これがのんちゃんとの約束やから」

屋上に来たのは、ちゃんととなりにいるように再現するため。

目を、そらしちゃだめ。

まっすぐ、その画面を見るんや。

また涙が視界を邪魔する。

一度、深呼吸をして。

涙をしっかり拭って。


震える手を伸ばして、三角のマークを押した。






.

[24]→←[22]



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (29 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
93人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:えぇふぇす | 作成日時:2018年9月2日 0時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。