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「なんか最近、楽しそうやん」
トントンと包丁で心地よいリズムを刻むお兄ちゃんがふいにそういった。
「そう？」
「おん。なんでか知らんけど、よかったなぁ」
何週間か前までは指から血を出すのもしょっちゅうやったのに、お兄ちゃんの玉ねぎのみじん切りはここ最近でプロ並みに上達。
「好きな人、とか？」
「はっ！？」
「はは、冗談やって」
好きな人やない。
うざくてでかいあいつなんか、
あいつなんか…。
「ほんまにそうなん？」
「ちゃうよ！…、たぶん、」
ちゃう。
やって深く関わらんって、
前からそっけない態度して、
気にしないようにしとったもん！
「たぶんって笑」
フライパンでなにかが焼けるいい匂いと音がする。
「そんな慌てて否定しても、お兄ちゃんにはばればれやでぇ〜」
ニヤニヤしとる。
ここからやと死角で見えへんけど、わかる。
料理の音が止み、白いお皿に乗ったチャーハンが目の前に置かれた。
「で、どんなやつなん？気になる」
べつに、そんなんちゃうし。
好きなんかやない。
これを認めたら、冷たい態度の意味がなくなってまう。
「なぁ、一つ聞いてもええ？」
私の向かいに座って、いただきますと手を合わせるお兄ちゃん。
「なんや」
「高校生なんて、一番楽しい時期やんか。でも、A一回も友達と遊んだりせぇへんやん。もしかして、迷惑かけるとか思ってへん？」
「っ、そんなこと、ないで？」
半分図星。
ほんまにお兄ちゃんはすごい。
なんでそんなにわかるんやろ、
「嘘。Aは隠すのが下手やねん」
誤魔化すためにパクっと口にしたチャーハンは、私が作るのより美味しいかも。
「なんで友達、作らんの？」
逃げ道は、もうない。
話すしか、ないねんな。
「おとんとおかんみたいに、大切な人をなくすんはもう嫌やねん」
勇気を出して呟いた言葉は、少しの沈黙を生んだ。
なにを言われるか、目をそらしたままやったけど、
「ふはっ、なんやそれ。Aらしいな」
お兄ちゃんはいつもの眩しい笑顔を見せてくれたから、話してみようと思った。
望と会っていること。
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作者名：えぇふぇす | 作成日時：2018年9月2日 0時
