［１４］ ページ14
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「なぁ。Aはさ、」
また別のある日。
望は唐突に話を始めた。
「気にならへんの？」
「何が」
「俺のこと」
毎日病院におって、自分の病室がある。
つまり、入院中ってことや。
けど、望がどんな病気を持っているのか、何のために入院しとるのか、全く知らなかった。
けど、知りたくない。
少しでも知ってもうたら、きっと、もっと気になってまうから。
決めたはずや。
接触は必要最低限に、って。
「…、別に」
「えぇ、興味持ってやぁ」
「それよりここ、教えて」
たまたま開いとった数学のワークの問題を、テキトーに指差して、話を逸らす。
「逸らさんでや」
「だって興味ないねんもん」
拗ねたような表情の望は、小さな声でブツブツ話し出した。
あ、これは、面倒なやつや。
「ちょっとくらい興味持ってくれたってええやん。だいたい、入院しとる人に対して心配とかせんの？おれ、病人やで？」
「あーもうめんどくさいなぁ。わかったから。望は何で入院しとるん？病気でも持っとるん？」
私が負けて、そう聞いた途端に嬉しそうな笑顔。
こいつ超うざいのに、何で憎めへんのやろ。
「おれの病気はな、分からんねん」
「は？」
ニコニコしながら話す望。
その言葉の意味は理解不能や。
「別に特別なトラウマとか、昔に何かがあったわけやないんやけど、突然意識が飛んでまうねん」
そんな病気、聞いたことない。
「意識が飛んで、そのまま放っておくと、心肺の機能とか脳とかが働かなくなってまうこともあるかもしらん」
もし、普通の生活を送っている途中で意識が飛んで、誰にも見つけてもらわれへんかったら、望は死んでまう。
せやから、意識が飛んだらすぐにわかるように、ずっと入院しとるんやな。
「前例が全くないねん、俺の病気は。治療法も対処法も何もかも情報が無い」
今まで私の前で意識が飛んだことはなかった。
「最近は？」
「最後になったんは、確か…、3日くらい前の日の寝てる時やったかな？」
「寝てる時って、寝てる時点で意識ないやん」
「心肺機能の低下があるとわかるからなぁ」
怖い。
素直な感想やった。
望がそんな病気を持ってるなんて知らんかった。
いつも呑気で、楽しそうなやつやってそれだけやった。
けど、望も、きっと苦しんでる。
種類は違うけど、私と同じように辛いことがあるんや。
助けてあげたい。
絶対に無理やけど、もしもできるなら。
望は綺麗なままでいてほしいから。
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作者名：えぇふぇす | 作成日時：2018年9月2日 0時
